土地収用はしばしば土地収奪につながり、環境汚染や強制移転によって地域の人々の土地や食料への権利、必要な自然資源や生活基盤そのものを奪ってしまう大きなリスクを伴う。

地域の環境や人々の暮らしへの悪影響を最小化するためには、適切なデューディリジェンスのプロセス、つまり事業の開始前に十分な調査や評価を行い、事業によりもたらし得る負の影響を特定し、直接影響を受ける地域住民への説明と対話を通して合意を確保することが求められる。

そして、住民移転は可能な限り回避するか、最小限にし、移転を行う場合は、住民との合意に基づき十分な保障を行うことが鉄則である。

人権を尊重するために必要なプロセスは明確であるにも関わらず、なぜ企業による人権侵害のケースはなくならないのか。

それは、事業による負の影響から守られるべき最も弱い立場にいる人々の声が聞かれていない、あるいは優先されていないから、ということに尽きるのではないか。

住民から訴えられた企業側の答弁としてよく聞かれるのは、「現地の法律に基づいて適切に対応している」というものだが、企業が事業を展開する開発途上国や新興国では、しばしば人権保障のための規制や基準、法制度が整っていない。

人材や能力不足、腐敗や癒着のために法の執行が弱いケースもある。軍や警察による脅迫や暴力などの深刻な問題もしばしば聞かれる。

企業は、進出先の国の法律を遵守するだけでは、人権侵害のリスクを回避することはできないのだ。

「子どもの権利とビジネス原則」の原則7は、環境破壊や土地収奪が子どもにも深刻な影響をもたらす問題であることを示している。

強制的な移転で生活基盤を奪われた家族の子どもは、適切な生活水準とともに、教育や保健、また成長に必要な栄養価の高い食料へのアクセスも失い、複合的に権利がはく奪された状態に陥ることは想像に難くない。

その結果、さらなる貧困への負の連鎖につながるケースが多い

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