日本はトランプの「パリ協定離脱」を非難できるか

そもそも日本はパリ協定の批准が大幅に遅れた。パリ協定採択の翌年にモロッコで開かれた第22回締約国会議(COP22)では、ルール作りに関与できない「オブザーバー参加」に格下げされた。日本政府がTPP協定などを優先し、パリ協定の優先度を低く見積もっていたからだ。

日本の温室効果ガス削減目標(2030年度)は2013年度比で26%だ。しかし1990年比で換算するとわずか18%減という不十分なものだ。かつての「チームー6%」など政府横断的なキャンペーンも影をひそめ、国として気候変動対策を力強く進めるという意思が伝わってこない。

経団連はパリ協定を支持し、「低炭素社会実行計画」を進めているものの、その内容は国際的にみて決してチャレンジングではない。さらには、世界でも主流の「カーボン・バジェット」には「断固反対」だ。カーボン・バジェットとは、温室効果ガス排出量の上限を840ギガ㌧に定め、それを超えないように施策を取る考え方だ。

経団連はホームページで「カーボン・バジェットは、温室効果ガス削減のみを絶対的な制約条件として強調し、経済成長やエネルギー安全保障といった他の重要政策課題への配慮を軽視するものである」と主張している。

経団連のアプローチは短期・積み上げ型の思考が強い。そのため、パリ協定で明文化された「今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、世界の気温上昇を産業革命前から2度未満(できれば1.5度)に抑える」という長期目標や、長期目標を起点にした「パックキャスティング」の考え方とは、内実はかなりの開きがある。

日本企業における温暖化対策の取り組み格差も顕著になってきた。パリ協定を受けて、「2℃目標」を実現するための国際プログラム「SBT」(Science-Based Target)が生まれたが、日本からも川崎汽船、キリンホールディングス、コニカミノルタ、コマツ、ソニー、第一三共の6社がSBTの枠組みで目標設定をした。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #パリ協定

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