「私の息子のように、大人が関わり方を変えればやる気になる子どもはたくさんいるはず。そう思っていた時に、地元の川崎市が主催する女性起業家セミナーの存在を知り、参加してみることにしました。すでに起業している女性や、これから起業を目指そうとしている女性たちを目の当たりにして、私も息子と同じように驚きました。世の中には自分の知らないところで頑張っている人がたくさんいるんだ、と。息子の心配をしていた私自身が、外の世界を全く知らなかったのです」
大人も子どもも、自分から外の世界に出ていかないと面白いことには出会えない。朝山さんは専業主婦という枠から飛び出してみて、初めてそう気づいたのだという。

ただ、外に出たからといって起業の道が用意されているわけではなかった。大学卒業後、すぐに結婚した朝山さんには仕事の経験も人脈もない。収支をプラスにするようなビジネスプランもない。あったのは、自分の思いついた社会変革をやり遂げたいという熱意だけ。そんな状態で2000年に立ち上げたのが、任意団体としてのキーパーソン21だった。
「ある日、一人の主婦が“そういうこと”に出会った。息子が『高校に行かない』と言わなかったら、私は起業をすることもなくそれまでの生活を続けていたと思います。最初は協力者もなく一人で思いたったことですが、自分のやろうとしていることを人前で話すと、いろいろな人たちが『手伝いたい』と言って力を貸してくれました」
企業での実務経験が豊富な協力者たちが組織の土台づくりを進め、事業や組織の基礎を固めていく。一方朝山さんは、就業経験がないことを自分の強みととらえ、固定化されたキャリアに対する認識をゼロベースでとらえ直すことに終始した。
2001年にNPO法人になったキーパーソン21はその後も子ども向けのキャリア教育事業を徐々に拡大させていく。その過程でユニークなキャリア教育プログラムが数多く誕生した。働く大人を学校の講師に招く「おもしろい仕事人がやってくる」。インタビューを通じて新聞記事をつくってもらう「かっこいいおとなニュース」。