ギンザのサヱグサ 対談 Green Dialogue
環境保全、環境教育などを通して社会貢献に取り組むさまざまなスペシャリストに、ギンザのサヱグサの三枝 亮が話を伺う「Green Dialogue」。第8回のゲストは、一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)で事務局長を務める水谷伸吉さんです。
水谷さんは大学卒業後、農機メーカー・クボタの環境プラント部門で勤務。その後、ベンチャー企業に入社され、インドネシアで熱帯雨林の再生事業に取り組まれました。2007年、坂本龍一氏が代表を務めるmore treesの立ち上げに携わり、現在、事務局長として国内外の森林保全活動や国産材を使った商品の開発などを手掛けられています。
明治神宮の森に見る、東京の本来の自然の姿
今回の対談では、東京にある身近な「森」ということで、まず明治神宮を訪れました。
――明治神宮には色々な木があり、本当に自然が豊かですね。
水谷さん:明治神宮は1920年に創建されました。97年前、ここは荒地だったそうです。明治天皇を祀るにあたり、この場所に神宮を建てようという計画が上がりました。
どんな木を植えれば、緑豊かな森に育つか。議論が重ねられ、時の林学者で造園家でもあった本多静六博士らが「この山手の地に適した植物は常緑広葉樹だ」と結論を出しました。
それで、葉っぱにツヤがあり落葉しないカシやクス、シイノキなどが植えられました。当時の内閣総理大臣だった大隈重信は、日光東照宮のような針葉樹の杉林を望んだと言われています。
ここには、全国から献上された365種類の木が植えられました。現在は234種類の木があるそうです。東京の気候に適さない100種類近くは淘汰され、今はありません。
東京のど真ん中にも関わらず、タヌキをはじめさまざまな動植物が生息しています。
この森の凄いところは、人の手でつくられたものでありながら、100年近くたった今、この生物多様性に富んだ環境が自然に成り立っていることです。循環システムができているのです。
――東京には元々こうした森があり、本来の植生に近づいているということですね。
more treesさんが全国で手掛けていらっしゃる森林保全活動にも、明治神宮のように森をつくるという事業はあるのでしょうか。
水谷さん:まだほとんどないです。私たちが各地でやっている活動の多くは、木を植え、育て、伐採し、販売するという林業です。
生産性とは別に、森とはどういうものか、そして森はどうつくられるのかを知って貰うには、この明治神宮の森は良いお手本になると思います。