「企業は誰のものか」という命題の終わり

「日本サステナブル投資白書2015」の機関投資家の動向面で三井住友信託銀行の経営企画部 理事・CSR担当部長の金井司氏は、持続可能な開発のフレームワークとIIRCのフレームワークが類似していることを示し、ESGのうちG(ガバナンス)が重視される風潮だが、長期的な観点からは環境が一番先にあったうえで、最終的に財務につながる観点こそがESGの本筋であると、今後の投資家の理解の醸成に期待を寄せて結んでいます。

また、アーク東短オルタナティブ㈱代表の棚橋俊介氏によると非上場企業に投資するプライベートエクイティ投資の源流である1950年代の米マーシャルプランによる欧州の戦後復興のための投資を始めたピーター・ブルックは、米国の資金で世界を良くしたいという責任投資の発想に感銘を受けてこれを始めたと述べられています。

このように、企業のものか、社会のものかに関わらず、投資活動も企業活動も社会・環境ときっても切り離せないものであることへの理解が、浸透しつつあります。コモンズ投信の渋沢健会長がよくおっしゃるように、資本主義はそもそも一人一人の小さい資本(滴)の集合体です。

これは一人一人の株主が株主以前に社会を形成する一人一人であるということだと思います。本当に会社は誰のものなのか、いえ、会社が誰のものであれ、責任を持たなければならないことが何であるのか、その前提をもう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。

企業が誰のものであれ、一方的に成長ストーリーを描こうとも、「それでも、地球(社会)は有限である」のだから。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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キーワード: #CSR#ESG

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