人間の目からは「野鳥の楽園」と見える場所であっても、そこに住む野鳥にとっては、異種間、同種間の激しく厳しい生存競争の現場だ。
そしてハクセキレイという強力なライバルに囲まれながら生き抜いていると思って見るからだろうか、石神井川のキセキレイの姿を見ると、私はそのたびに健気とさえ感じてしまう。
種の分化は職業の分化にも例えられている。石神井川の周辺に、何かキセキレイなりのニッチな世界が確保されているのだろうか。
大都市の中の、小さな水辺の身近な生き物の世界にも、まだまだ私たちが知らないこと、気づかないことがたくさんあると日々実感する。
ちなみに、この2種類のセキレイは、鳴き声も「チュ・チュチュ」「チチ・チチチ」「キチキチ」など似ているが、体同様、声もハクセキレイのほうが大きく、また歯切れよく聞こえる。慣れると、鳴き声から聞き分けることができるので、声をたよりに探すこともできる。
滅多に出会えず、また観察には双眼鏡かズーム機能つきカメラがお奨めだが、キセキレイが毛づくろいする姿は、普段のスリムなイメージとは全く異なり、時間のたつのを忘れて見入ってしまう。日頃、水辺を散歩する折などに、キセキレイの姿はよく見かけているという方も、是非、ご覧ください。
ハクセキレイについても、セグロセキレイとともに次回コラム「世界の覇者と日本固有種 対照的な2種のセキレイ」で写真とともにご紹介したい。