三井住友銀の新融資方針は不十分:環境6団体が声明

三井住友銀行が6月18日に石炭火力発電、パーム油、森林伐採についての新たな「事業別融資方針」の制定および「クレジットポリシー」の改定を公開した(注1)。環境NGO6団体は、方針表明を受け、石炭火力発電所と森林減少に対する融資方針を厳格化する姿勢を打ち出したことを歓迎する。

一方、石炭火力セクターへの与信制限を明示しながら、実質的には現状容認となりうる抜け穴があるものと考える。日本3大金融グループの中で、地球環境に著しく悪影響を与える懸念のある特定セクターへの与信の対応を明確化したのは3社目である(注2)。

同発表において、三井住友銀行はメガバンクとしては初めて、石炭火力電力セクターへの「新規融資は国や地域を問わず超々臨界およびそれ以上の高効率の案件に融資を限定」することを明確にし、同セクター与信に対する具体的な制限を明記した。

しかし、方針の中には「新興国等のエネルギー不足解決に貢献しうるなどの観点から、適用日以前に支援意志表明をしたもの、もしくは日本国政府・国際開発機関などの支援が確認できる」案件において「ポリシーの例外として、慎重に対応を検討」するという言及がある。これは”大きな抜け穴”となりうる可能性を持ち、この方針自体の意義を無効化しかねず、気候変動対策として評価できない。

また、仮に高効率のものであっても、750kg/kWhものCO2を排出する新たな石炭火力発電所の建設は許されず、既存の石炭火力発電所であっても廃止していく必要があるという国連環境計画の勧告が存在する中、石炭火力発電を許容する方針は状況認識が甘いと言わざるを得ない。

さらに、三井住友銀行は大型の超臨界圧技術を用いたベトナムのギソン2石炭火力発電事業への融資を今年4月に決定している。これは、超々臨界圧より劣る大型の超臨界圧技術を用いており、「赤道原則」に違反している可能性もあると地域NGOに批判されている(注3)。こうした事業への融資は、三井住友銀行の今回の方針がこのような「大きな抜け穴」を許すものになりうることの証左である。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #パリ協定

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