三井住友銀の新融資方針は不十分:環境6団体が声明

パリ協定の1.5~2℃目標達成のために、多くの銀行は石炭火力発電や石炭採掘事業への新規融資を禁止している。今回の三井住友銀行の石炭火力発電セクターへの与信制限に関する発表は明らかにこの水準に行き届いていない。6NGOは同社に対し引き続き、国内外の石炭火力発電事業や石炭火力発電に関与する企業への新規融資・引受から迅速に撤退する意思と工程をより明確にすることを求める(注4)。

三井住友銀行は「事業別融資方針」の中で、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)と同じく、石炭火力と同様に気候変動リスクを高めるパーム油・森林伐採にも触れている。

しかしパーム油事業については、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証と同等の認証制度の有無を確認するだけでは森林減少、および気候への影響の高い泥炭地管理、人権侵害についての確認が不十分であり、広範に支持されている高炭素貯留アプローチ(HCSA)を義務付けるなど、追加的な確認項目を設定することが必要だ。

また森林伐採への対応として、違法伐採や違法な焼却への融資を禁止することは前進だが、それだけでは「持続可能な開発目標(SDGs)」目標15にある2020年までに森林破壊を阻止することは満たせない。

三井住友銀行はSDGsへのコミットメントを表明しており、その中の目標13「気候変動に具体的な対策」について注力して取り組むとしている。私たちは同社が石炭からのダイベストメントを早急に進め、気候変動の緩和に重要な役割を果たす森林、特に熱帯林の保護などの取り組みも強化することを期待する。

注1:「事業別融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」株式会社三井住友銀行(2018年6月18日)

注2:「NGO共同声明:みずほFG新投融資方針策定、気候変動リスク管理に対する小さな前進。さらなる具体化が必要」(6月14日)、

「NGO共同声明:『小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要』三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表」(5月25日)

注3:ギソン2石炭火力発電事業プロジェクトの環境影響評価においては代替案が検討されていない、住民協議が適切に行われていないなどの懸念があり、銀行による環境・社会リスク管理を定めた「赤道原則」に違反している可能性もある。

注4:「石炭火力発電事業及び石炭採掘事業への新規融資に関する要請」では国際環境NGOの日本支部は賛同団体とともに、3大金融グループ゚に対して以下の対策を求めている。

1.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言にもとづき、温室効果ガスを大量に排出する分野への投融資状況を公開すること、

2.世界の平均気温の上昇を摂氏2度未満に抑えるシナリオに整合した事業戦略や明確な指標や目標を公表すること、

3.パリ協定の目標達成のため、石炭火力発電事業及び一般炭の採掘事業に関与する企業への新規融資を中止すること。

*26日(火)13時〜14時半、東京証券会館で、RAN、350.org、グリーンピース・ジャパンが共同で記者ブリーンフィング「日本の日本の金融機関に求められる気候変動対応:石炭ダイベストメントと森林リスク」も開催する。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #パリ協定

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