SDGsは政策での「主流化」が進むか?

■「第4次産業革命」「Society 5.0」とSDGs

よく読むと、この文章は政府文書特有の長文である上、「第4次産業革命」と「Society 5.0」が並列されている。4次と5.0とはいかにも分かりにくい。

これらは何か。こういう時には「白書」が役に立つ。「白書」という言葉は、もともと英国政府の議会に対する報告書が表紙に白い紙を用いていたため、「white paper」と呼ばれていたことから生まれたといわれる。白書には法律の規定に基づき国会に対して提出される報告書や閣議へ提出される報告書などがある。

「情報通信白書」は閣議への報告書であるが、「第4次産業革命」をフィーチャーした平成29年版は「ICT白書2017」と括弧書きがあり「データ主導経済と社会変革」という副題がついている。「第4次産業革命」について次のようなダボス会議での考え方が紹介されている。

歴史上、18世紀の英国から始まった「第1次産業革命」(石炭燃料や蒸気機関という動力が牽引)、「第2次産業革命」(19世紀末以降、燃料が石油に変わり、電力も一般化し大量生産・大量消費社会へ)、「第3次産業革命」(20世紀後半、パーソナルコンピュータが登場して情報社会へ)。そして、「第4次産業革命」は、IOTを介した情報コミュニケーション社会の到来だ。(同白書の次の図表をご参照)

平成29 年版 情報通信白書 第1部107ページより

一方、「Society 5.0」は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)というものだ。

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指す。第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。こちらは内閣府が担当で、分かりやすいサイトをつくりSociety 5.0について発信している。

内閣府のSociety 5.0 のページより

以上を総合して政府文書を読み解くと、①第4次産業革命時代を迎えたという認識の下で、②日本の技術力の総力を結集するSociety 5.0により、③創造性とイノベーションを重視するSDGsの世界的目標の達成に寄与していく、という3要素が政府の方針であると理解できる。

■「笹谷秀光公式サイト―発信型三方よしー」

社会課題の把握の上でこのような政府文書の理解も必要である。筆者の行政経験(農林水産省・環境省出向・外務省出向など31年間)を活かし、これらの政府文書をビジネス経験(伊藤園で10年間)を踏まえた実践的な角度から読み解き、今後の企業戦略のヒントを探っていきたい。

SDGsでは、今年は政府の「第2回ジャパンSDGsアワード」の締め切りを9月30日と発表して昨年より1か月半早めている。

この関連で、9月10日に筆者が登壇するセミナーをご紹介したい。題名は「ESG競争時代におけるSDGs活用戦略 -ジャパンSDGsアワード募集締め切り直前の緊急講義-」
主催:金融ファクシミリ新聞社、場所:都内
登壇日:9月10日(月)13:30-16:30
申し込みは https://www.fngseminar.jp/seminar/index.php?p=detail&num=3709

今後、企業の社会的責任、地方創生などのテーマについて、企業ブランディングと社員士気の向上を通じて企業価値を高めるための理論と実践(CSR、CSV、SDGsなどの応用)について、「笹谷秀光の公式サイトー発信型三方よしー」で取り上げていきたい。ご一読いただければ幸いである。

◆「笹谷秀光の公式サイトー発信型三方よしー」サイトの狙いがわかる「プロフィール」ページはこちら

笹谷秀光公式サイト「プロフィールページ」
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笹谷 秀光(CSR/SDGsコンサルタント)

東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年~2019年4月伊藤園で、取締役、常務執行役員等を歴任。2020年4月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『 経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019年)。 笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし 執筆記事一覧 

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