■助成金への依存を排せ
助成金もむやみに出せばいいというものではない。助成金漬けの虚弱体質のNGOでは競争力もない。間接費補助は米国でも実施しているが期間は限定している。その間に優秀な人材を集め自立の道を探ってもらうという考え方である。助成金を出すのにも、自己資金とマッチングしたり、上限を設けたりするなど、NGOの自助努力を促す視点が求められる。
税金を使うのであれば、最大の効果が期待できるNGOに助成してほしいと思うのが納税者である。支援能力のない団体にお金を流すのは、それこそお金をドブに捨てるようなものだ。NGOの活動によってどういう成果があったのか、問題点は何か、改善策はあるのか。活動を厳格に評価し次の支援の改善につなげてもらいたい。
■SDGs時代のモデル構築を
米国では政府からの支援が減ったのを機に「NGOと企業がwin-win関係でコラボする時代」を迎えている。スタンフォード大学発行の「NPO」でマーケティング専門家のピーター・パネペント氏はこれを「NPOコラボレーション2.0」と呼んでいる。健全な市民社会なくして真の民主主義はない。企業にはSDGsの視点からNGOの新たな可能性を引きだしてほしい。単なる寄付の時代は終わり、自社の技術、ノウハウ、人材を持続可能な社会実現のためにどう生かすか、どう新たなビジネスにつなげるかが問われている。海外の現場経験が豊富なNGOと一緒にできることがあるはずだ。
JPFの失敗の本質は、三位一体と言いながら、それぞれが独自のカルチャー、価値観にこだわり、異質の壁を乗り越える努力が足りなかったことにある。コラボレーションというのは、異質なもの同士が出合い壁を超えることでイノベーションを生み出すことであるはずだ。相互のコミュニケーションもなく、チャレンジもない、もたれあいからは何も生まれない。
■アリと象は握手できない
もちろん、企業は既にNGOとの連携を模索している。例えば味の素はガーナで、自社の栄養添加剤を使って乳幼児の栄養改善プロジェクトに取り組んでいるが、現地の事情に詳しいケア・ジャパン、プラン・ジャパンと連携、その後、ワールド・ビジョン・ジャパンも加わった。またリコーは、セーブ・ザ・チルドレン・インドと組んで、学校に通えない子どもが多いインドでプロジェクターやデジタル教材など自社製品を使った教育支援に取り組んでいる。
NGOはすべて欧米系であり、日本のNGOには声がかからない。その理由は規模感がまるで違うからだ。アリと象が握手するにはよほどの工夫が必要である。また、ある国でプロジェクトが成功した場合、企業としてはガーナなら隣国やアフリカ全体への横展開を想定しているが、全世界に支部を持つ欧米系の国際NGOと違い日本のNGOはほとんど支部を持っていないのが実情である。
■社会起業家に学べ
欧米系NGOは合併などで進化している。一方で、ビジネスセクターも国際協力分野で積極的に動き始めている。IT企業のモンスターラボはパレスチナやシリアで難民を雇用するプロジェクトを進めている。NECは顔、虹彩、指紋、声など6つの世界最高水準の生体認証技術を持っており、難民キャンプ等で導入が可能だ。
規模は小さくでも社会貢献をビジネスで行う社会起業家は、バングラデシュ支援のためバッグを製造しているマザーハウスやカンボジアの農村にコミュニティファクトリーをつくり貧困家庭の女の子の雇用と職業訓練を実施しているかものはしプロジェクトが知られているが、ソーラ―ライトなどシンプルな技術を途上国に持ち込み貧困削減を図っているコペルニクなども参考になる。
■援助の手法も工夫を
先進国のNGOの役割が見直される中、JPFは新たな姿を見いだせずにいる。英国にはDEC(ディザスター・エマージェンシー・コミッティー)というリーディングNGOのアンブレラ組織があり、紛争や自然災害が発生すると、選ばれた5~6団体が一斉に出動する。ウエブで団体の実績やスタッフの横顔を紹介してファンドを集める。そんな試みに挑戦している。NGO先進国のオランダでは、時代の流れに逆らわず、4大NGOにODA予算の執行を代行させ、そこから途上国のNGOに資金を交付している。JPFに求められるモデルは果たしてどういうものか、いま模索すべき時である。
■終わりに
筆者はJPFでは2000年に共同設立者として参画。過去において理事などを経験しながらジャーナリストとしてJPFと社会をつなぐ役割を果たしてきた。期待の大きいJPFだが、最近は不祥事が目立つ。多額の税金を預かる公的な存在だけに、実態を伝え本来の姿を取り戻してほしいという思いからこの叱咤激励のレポートになった。取材は難航したが、現状を憂える多くの関係者から協力をいただいた。JPFには改革への一歩を踏み出してほしいと切に願っている。(完)