■脱石炭の潮流を直視すべき
保険会社も、公共性が高く社会のために事業をしているという思いは当然あった。しかしNGOに入ってみると、日々やっていることが「仕事」ではなく「社会貢献」であると感じることができるのが新鮮だ。
仲間と働く中で、それまでとは異なる観点から多くの学びを得ている。保険会社時代には、温暖化が自然災害の増加をもたらし、保険金支払いが発生する事故が多発する懸念がいつも頭にあった。中心となっていたのは、顧客への迅速な支払い態勢や適切な保険料率の研究だった。
しかし、保険会社のもう一つの重要な機能である資産運用でも大きな責任があることを知った。つまり銀行や保険会社が温室効果ガス排出関連のプロジェクトや企業に投資することで、結果として地球温暖化に加担しているという事実だ。
海外ではいくつかの大手銀行や保険会社がダイベストメント(投資撤退)宣言をして、石炭関連事業者への新規投資を控えたり、既存の投資を引き上げる行動に出ていることが分かった。
驚いたことは、地球温暖化防止の分野で先行していると思っていた日本が、いまだに国内外で石炭火力発電所の新設を予定しているなど、欧州を中心とした脱石炭の潮流に遅れをとっていることだ。
6月11日に政府が閣議決定した地球温暖化に関する長期戦略においても、石炭火力発電への依存が前提となっている。昨年IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が警告し世界の共通目標になりつつある、産業革命前に比べ地球の平均気温の上昇を1.5℃までに抑える方向との整合性が見られないのは残念だ。
■経営者の経験生かしNGO全体の存在感発揮へ