■競争の枠離れ、多様性ある教育を
花緑さんは教育のあり方に期待を寄せている。「子ども達は競争しないとものを覚えられない環境に置かれている。競争という枠の中にいる以上、周りとの比較になる。自分と同じでないと相手をおかしいと思い、いじめにつながるのではないか」と話した。
江戸時代には寺小屋があり、八百屋の子どもは野菜の漢字を、大工の子どもは建築に関する漢字をそれぞれ同じ時間に学んでいた。「ここに競い合いはない。江戸時代にはそういうことをやっていた。それに立ち返ってはどうだろうか」と提案する。
「目に見えない発達障害は当事者とその家族が一番大変。彼らを支援する人たちに期待したい。そして自分には関係ないと思っている人たちにぜひ知ってほしい。社会の多様性とはそういうこと」と花緑さんは会場の参加者に呼びかけた。
だが一方で「自分から知りたいと思った人はよいが、知りたくない人に『あなたは発達障害です』と言うのはかなり危険な事ではないか。今後専門家が話し合っていくべき」と指摘する。
講演会を主催した認定NPO法人エッジの藤堂栄子会長は「まず、よいことを先に伝えてあげることが大切。花緑さんのように、ロールモデルとして発達障害でも自分らしく生きていけるんだと伝えてくれる人がたくさん出て来ると、当事者は安心出来る」と話した。
さらに藤堂会長は「読み書きが出来ないことは、生きていくうえでたくさんやることのたったひとつ。不幸とは関係ない」と強調した。
花緑さんはこれからも発達障害であることを公表していくつもりだという。「読み書きができないことはその人を全否定することになりかねない。そうではなく、それぞれがそれぞれの才能を活かして、生きていることを思い出してほしい」と締め括った。