論説コラムー廃棄物新時代、「処理」から「循環」へ

ナカダイにも頻繁に電話がかかってくるが、分別してないもの引き受けない。企業が廃棄物を自由に捨てられる時代は終わったのだ。
廃棄物の流れの変革は消費者にも意識改革を迫っている。

レジ袋を失くせば済むという簡単な問題ではない。モノファクトリー、ナカダイ両社の社長をつとめる中台澄之氏は、消費者の「便利でよりよく」「効率的に」という考え方を問題視する。「通販で注文すれば次の日にすぐ届く。中身に限らず大きな袋。定型だからロボットで作業できる。過剰包装になるのはそういう理由から。

技術革新によりLDが出てきて古い信号機は、まだ使えるのに廃棄されている。つまり、高性能の新品ができたことで廃棄物が発生するわけだ。スーパーに行けばいつでも買えるという便利な仕組み維持しようとすると無駄も出る。企業を批判するばかりではだめで、廃棄の理由を知って、そのうえで、それをどうするかとか、再利用できないかとか考える必要がある」。

中台社長によれば、今後は世界的にゴミ出し規制や総量規制が予想されるという。そうなると真の循環型社会を作るしかない。「何年か後に商品を廃棄物として引き取るとして、リサイクルするには、設計・製造の段階から、廃棄を前提につくる必要がある。木製品でも接着剤に何を使うか。チップにして燃やせるのか、ガスが出るなら燃せないから引き取れないということになる」。

中台社長が現在のリサイクルの仕組みを作り上げるのに10年かかった。人材育成、利益を含む先進的なスキーム確立は簡単ではない。廃棄物をごちゃまぜにして埋め立て、その時は、簡単で効率的だと思っても、それはサステナブルではないし、利益を生む大きなビジネスにはならない。今それを変えていこうと業界内で話し合っているという。

そうなれば、ものの流れも変わるし、リサイクルは未開拓だが、大きなマーケットになりうる。廃棄物処理業者が廃棄物を減らすのが仕事になるのである。廃棄物処理に当てられる費用は年間15兆円とされる。その資金を、廃棄物を生かした物作り、そのためのデザイナー育成、スキームづくり使ったら、思い切ったことできるのではないだろうか。(完)

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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キーワード: #リサイクル

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