原田勝広の視点焦点:元国連の明石康さんのこと

特に日本は憲法の問題から、非軍事を意識してPKOなどに慎重だが、SDGsという経済社会問題だけにシフトするのはよくない。特にこちらの方面は中国が大きな影響力を持っており日本がどこまで影響力を発揮できるか心配がある。

さらに、明石さんが代表を務めたUNTACこそカンボジアでSDGsを実践したといえるのではと話されました。確かにUNTACは、1992-93年に内戦が終わったばかりのカンボジアで、いわば暫定政府の役割を担ったPKOでした。

32か国から16,000人が派遣され、軍事、警察部門だけでなく、難民・避難民帰還、復興、人権まで幅広く担当しました。国家再建が目的だから、今思えば、SDGsの目標1(貧困削減)、2(飢餓撲滅)、3(福祉)、4(教育)などに当たるテーマにもかかわりは深かったと言えます。

明石さんの旧ユーゴでの苦労は個人の能力の問題ではなく、国連の安保面での実力、あるいはPKOの限界ではなかったかと思われます。そういう意味で、明石さんは国連とともにその歴史を歩いた日本人だと言えるでしょう。

明石さんは緒方さん同様、日本の宝、財産であることに変わりはないと思います。  (完)

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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