COP25前半:パリ協定 積み残されたルールの議論紛糾

平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるという長期目標を持つ「パリ協定」が2020年から本格的に始まります。その実施を前に、国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)が、2019年12月2日から2週間の会期で、スペイン・マドリードにおいて開催されています。パリ協定の実施に必要な大筋のルールは、2018年12月のポーランド・カトヴィツェでのCOP24にて、決められましたが、その中で積み残されたルールがあります。今回のマドリードCOP25では、そのルールについて合意し、さらにパリ協定が効果的に実施されるように準備を整えることが期待されています。COP25の1週目の議論について報告します。(WWFジャパン

■COP25の4つの焦点

今回のCOP25では、主に4つの焦点があります。

(1)「パリ協定」の積み残しルールの詳細決定
(2)各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げ
(3)非国家アクターの動き
(4)石炭からの脱却

■(1)「パリ協定」の積み残しルールの詳細決定

まず一つ目は、積み残されたルールについて合意すること。実は、2018年12月のポーランド・カトヴィツェでのCOP24において、パリ協定の実施に必要な大筋のルールは、詳細が決められていました(図参照)

パリ協定の主なルール

しかし、積み残されたルールがいくつかあります。

その中で代表的かつ最も注目を集めているのは、「市場メカニズム/非市場メカニズム」と呼ばれる論点(パリ協定6条:協力的アプローチ)です。これは、2カ国以上の国が協力して温室効果ガス排出量の削減を行ない、その削減分を国際的に取引する仕組みのことです。

その他の論点としては、温暖化の影響が、社会の適応できる範囲を超えた時に発生してしまう「損失と被害」への対応をパリ協定の下でどう扱っていくのか、またパリ協定の下での目標の期間の長さを5年にするのか、10年にするのかといったことなどが話し合われています。

■(2)各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げ

2つ目は、なんといっても、各国が削減目標を引き上げる機運が醸成されるかどうかです。先進国・途上国の枠を超えてすべての国が参加する画期的なパリ協定ですが、削減目標はそれぞれの国が国内で決めたものを国連に提出する仕組みとなっています。

しかし、結果として各国がパリ協定に現状提出している削減目標は、すべて足し合わせても、気温上昇を2度未満に抑えることはできないことが分かっています。削減目標は2020年の3月までに、各国が再提出することが決まっています。その際になるべく各国、特に先進国が、それぞれの削減目標を引き上げるように促すことができるかは、このCOP25の大きな焦点なのです。

スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが始めた気候マーチによって、地球温暖化の影響を最も受けてしまう若者世代が世界中で立ち上がって、大人たちに温暖化対策を迫っています。その声を受け止めて、各国が温暖化対策を加速させていけるか、その気運をこのCOP25が醸成できるか、注目されます。

気候危機を訴える若者世代

■(3)非国家アクターの動き

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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