インドネシア森林火災と、日本の紙消費・銀行業務

日本のバイヤー企業との関係

さて、こうした森林火災は、どのような場所で起きているのでしょうか?

インドネシアの環境林業省は、今年の森林火災に関係があるとして、パーム油、紙パルプ及び天然ゴム農園企業など83社の事業を凍結しました。その83社の親会社は17社の企業グループに該当し、ジャカルタ、クアラルンプール、シンガポールの証券取引所に上場している大企業も含まれます。パーム油企業は61社だったのですが、その6割が持続可能なパーム油のための円卓会議という認証制度のRSPO認証加盟企業だったということで、認証制度の有効性への批判もでています。

森林火災に関与した企業として名指しされたのは、紙パルプとパーム油生産を含む複合企業グループのシナルマス(紙パルプ大手APPの親会社)、ロイヤルゴールデンイーグル(紙パルプ大手APRILの親会社)とAustindo、Batu Kawan、DSN、カーギル、Ganda、IOIグループ、ムシムマス、Provident Agro、Rajawali、、サリム・グループ、Sampoerna、サイム・ダービー、Tianjin Julongなどのパーム油関係企業です。

World Resource InstituteのGlobal Forest Watch Fireのデータベースによれば、2019年の11月末までの火災警報の発生地域は、紙パルプ植林管理地域内で15%、アブラヤシ農園管理地内で11%、木材伐採の管理地域が5%、残りの68%は管理地域外となっており、管理区域としては紙パルプがパーム油よりも火災警報が多く、広大な管理地域を利用している紙パルプ企業の責任は大きいのです。

APPやAPRILは、主にインドネシアの植林木を利用して紙パルプ生産を行う企業です。日本にもコピー用紙や印刷用紙、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどを販売しており、多くはAPPのものです。

APPのコピー用紙は、輸入紙で日本国内最大シェアの約2割を占めており、丸紅や伊藤忠商事などの商社を経由して、アスクルが販売しているインドネシア製のコピー用紙やコクヨが運営しているカウネット、プラスなどの文具メーカーを含め、様々な形で販売されています。

またAPPはユニバーサルペーパーという子会社からHelloという名称でティッシュなどの衛生紙を販売しています。スーパーマーケットのCGCブランドのトイレットペーパーもAPP製です。

雑誌を含む様々な印刷用紙、産業用紙、特殊紙などとしても、 APPの紙は広く利用されています。 APRILは中国の子会社のアジアシンボルなどを通じてペーパーワンやCOPY&LASERという名称のコピー用紙を量販店などで販売しています。

これらAPPやAPRILが保有している植林地の多くが、天然林からの転換によって造成されています。APPによれば、実際に植林が行われている植林地は100万ヘクタールで、約6割が泥炭地の上に植えられています。

またAPRILの基幹企業の植林地も約6割が泥炭地の上にあると報告されています。これらの企業の紙製品のカーボンフットプリント(生産活動に伴う炭素発生量)は、非常に大きなものになってしまいます。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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