文明論としてのSDGs (笹谷 秀光)

2020年はいよいよSDGs五輪イヤー。「文明論としてのSDGs」を考えたい。令和では「持続可能性」が企業経営にとって最も重要な価値観になった。持続可能性の世界共通言語がSDGsである。SDGsは突き詰めると文明論である。SDGsの取り組み方も国の文明によって異なるとつくづく思う。スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんへの反応などにもお国柄が現れる。今年はSDGs五輪・パラリンピック・イヤーだ。日本はいつまでも「解読作業」をしているとSDGsのガラパゴス化につながりかねない。早急にこの共通言語を使いこなすべきだ。(CSR/SDGsコンサルタント/ 社会情報大学院大学客員教授=笹谷秀光)

SDGsのガラパゴス化を防ぐには

SDGsの基本であるサステナビリティ(Sustainablity:持続可能性)も難しい。皆様はどのように、この言葉を人に説明しているであろうか。

筆者は、「世のため、人のため、自分のため、そして子孫のためを考えた社会づくり」と「世代軸」を入れた概念として理解している。

持続可能性は未来につなぐ概念であり世界文化遺産などを例にするとわかりやすい。孫子(まごこ)の代に受け継げるかという価値観だ。

日本には和の精神があるので、SDGs「目標17: パートナーシップ」も根付いている。また、日本では古くから「三方良し」のような商習慣がある。SDGsを加速させるポテンシャルは極めて高い。

ところが、これが「くせ者」だ。このため、「わざわざ外来のSDGsなどいらない」との議論になりやすい。ここが運命の分かれ目になる。

三方良しはよいが、今のところ世界には通用しない。それは「隠徳善事」という言葉があるように、日本の企業は、「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」と考え、あえて自分から発信しないことが多かったためだ。このメンタリティーが日本企業の島国内競争による「ガラパゴス化」の一因でもある。

しかし、現在のようにインバウンド来訪者3千万人時代で国内にもグローバル化が浸透している社会ではとても通用しない。発信しないと同じ志を持った仲間が増えない。仲間内だけではイノベーションも起こりにくい。また人権・環境など世界課題の認識がないとリスクに見舞われる。

そこで、筆者は、「発信型三方良し」を提唱してきた。「三方良し」(自分良し、相手良し、世間良し)の「世間」の課題が今はSDGsだと考えればよい。つまり「発信型三方良し」を「SDGs化」していけば世界に通用する。

ガラパゴス化につながる外来語のこなし方

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笹谷 秀光(CSR/SDGsコンサルタント)

東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年~2019年4月伊藤園で、取締役、常務執行役員等を歴任。2020年4月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『 経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019年)。 笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし 執筆記事一覧 

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