文明論としてのSDGs (笹谷 秀光)

ガラパゴス化につながる外来語のこなし方

日本の場合は、もう一つ問題がある。それは外来語のこなし方だ。もともと「和魂洋才」でうまく外来の概念を日本語化してきた。福沢諭吉をはじめ明治の知識人は、素晴らしい訳語を考えた。

しかしここに来て日本人は横文字を取り入れる工夫力を失ってしまったようだ。特に3文字略語は全くうまくいかない。 CSRしかり、CSVしかり、ESGしかりだ。ましてやSDGsなどは小さな「s」までついている。この言葉のハンディがガラパゴス化に拍車をかけSDGsの浸透を妨げているとすれば大変な損失だ。

特に、CSR(Corporate Social Responsibility)のResponsibilityを、日本語で「(社会的)責任」と訳したことにより、受け身型の最低限守るべき事項とか、重い責任を取らされるといった語感が漂う。翻訳というものは難しい。

この語の本来的な意味は、Responsibility=Response(反応する・対応する)+ability(能力)、つまり「反応(対応)する能力」である。したがって、CSRは社会課題への積極的対応も含めた「社会対応力」として理解すべきである。

「企業の社会的責任」という訳語は語感が狭いので、CSRの訳語を「企業の社会対応力」に改定して、内容をとらえ直していくべきと、筆者はかねてより提唱している。

ガラパゴス化から生まれる日本人の自信喪失

sasaya_hidemitsu

笹谷 秀光(CSR/SDGsコンサルタント)

東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年~2019年4月伊藤園で、取締役、常務執行役員等を歴任。2020年4月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『 経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019年)。 笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし 執筆記事一覧 

執筆記事一覧

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..