■泥炭地破壊など深刻なESGリスク
報告書では、メガバンクと財務的なつながりの深い企業で具体的にどのような違法行為や問題があるのか、そのESGリスクに関して3社の事例を紹介している。
大手パーム油企業やパルプ・製紙企業を傘下に置く「シナルマス・グループ」では、実態としては所有関係のある会社の株式名義を変えるなどして表面上分離させた「シャドーカンパニー」2社が、西カリマンタン州で森林と泥炭地8000ヘクタールを破壊していたことが判明。その他、租税回避や汚職などのリスクも指摘されている。
「サリム・グループ」傘下のインドフード・アグリ・リソーシズ社では、アブラヤシプランテーションで児童労働を含む違法労働や搾取の慣行が判明。性差別や危険な労働条件、最低賃金を下回る給与などが確認され、さらに労働組合に加盟した労働者への会社による脅迫行為や不当解雇などが問題となっている。
同社は加盟していた「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から、2019年初頭に認証と会員登録が停止された。この2年間でネスレやユニリーバ、不二製油など大手企業を含め15社の販売先を失っているという。
「ジャーディン・マセソン・グループ」傘下のアストラ・アグロ・レスタリ社の子会社は、中部スラウェシ州のプランテーション事業で事業許可や土地耕作権を取得せずに栽培を行っているとして問題化。インドネシア大統領府の報告によれば、現地コミュニティの住民との土地所有権による紛争で、6村2893世帯が憲法上の権利を侵害されている。
【訂正】冒頭3パラグラフ目の83社の事業凍結について、当初の記載に誤りがあったため、下記の通り、お詫びして訂正いたします。
訂正前:同国政府は2019年9月、被害を緩和するため、火災に関与したとされるパーム油や紙パルプ、天然ゴムに関する企業83社の事業を凍結した。
訂正後:同国政府は2019年11月時点で、被害を緩和するため、火災に関与したとされるパーム油や紙パルプ、天然ゴムに関する企業83社の農園事業を凍結した。
なおその後の報道によれば、インドネシア環境林業省は2020年1月時点で90社の農園事業を凍結しています。(訂正日時:2月26日)