■求められる損保各社の気候変動対策

保険金支払いの急激な増加を受け、損保各社は2019年10月に住宅向けの火災保険料を6~7%、企業向けの火災保険料を4~5%引き上げ、2021年には再引き上げも見込まれている。こうした保険契約者の負担増のなかで、損害保険会社自身が気候変動リスクの緩和に取り組むことが重要だと報告書は指摘する。

例えば石炭火力発電事業への保険引き受け方針だ。今後数十年にわたって温室効果ガスを排出する新規石炭火力発電所の建設は、世界の平均気温上昇を2度より十分低く保ち、1.5度に抑えるべきと規定したパリ協定の方向性と逆行する。

欧米や豪州の大手保険会社が石炭関連事業への保険引き受けを停止・制限する方針を掲げるなかで、日本の大手損保会社は石炭関連事業への保険引き受けを継続しており、脱石炭の方針は掲げていない。

環境NGOの国際ネットワーク「Unfriend Coalキャンペーン」が2019年12月に発表した世界の大手保険会社の気候変動・脱石炭への取り組みに関するランキングで、日本の大手損保3グループは方針を持っていないため最下位と評価された。

報告書はこうした事実を指摘した上で、火災保険ビジネスが危機に陥る前の対策として、損害保険会社と監督官庁である金融庁に対し以下の4つの点を提言している。

1. 気候変動リスク情報の開示強化(物理的リスクについて統一した基準での評価と開示)
2. 損害保険会社のレジリエンス強化(大規模自然災害に対する毎年の積立率などの引き上げ)
3. 気候変動の物理的リスクを踏まえた保険料の設定(リスクの高い地域の保険料値上げ)
4. パリ協定の長期目標と整合性のある保険引き受け・資産運用(石炭火力発電事業への保険引き受け停止など、パリ協定の長期目標と整合性のある資産運用)

JACSESの田辺有輝プログラム・ディレクターは、「(保険契約者の立場としては、)損害保険の契約前に、保険料やカバー範囲だけでなく、保険会社として気候変動リスクに真剣に向き合っているかどうかを見ていくことが重要だ」と指摘し、以下のように述べた。

「今後気候変動が深刻化するなかで、残念ながら民間だけで火災保険を存続させるのが難しくなることが考えられる。その際、(地震保険で行われているような)半官半民の仕組みへのシフトをスムーズに行えるよう、あらかじめ関係者間で議論し、政府や金融庁として準備しておくことが求められる」

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