COP26の成果と課題、現地入りしたNGOが解説

英・グラスゴーで開かれていたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が現地時間13日に閉幕した。採択した文書では、世界の平均気温の上昇を「1.5度」に抑えることを強調し、石炭火力の段階的削減、焦点になっていたCO2の削減量を取引するルールを制定した。国連公式オブザーバーとして現地入りしたWWFジャパンが、COP26の成果と今後の課題についてまとめた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

COP26は会期を一日延長して、現地時間11月13日に閉幕した

WWFジャパンが日本時間14日早朝に発表した、COP26の「速報報告」は下記の通り。

■CO26の2つの成果、「1.5度」と「市場メカニズム」

コロナ禍による1年の延期を経て、10月31日からイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)は、会期を1日延長して、11月13日に閉幕しました。

今回の会議では、大きく分けて2つの成果が求められていました。

1つ目は、パリ協定が目指す目標、つまり、世界の平均気温の上昇を「2度より充分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」ことに向けて、明らかに足りていない各国の取組み強化を打ち出せるかどうか、です。

2つ目は、パリ協定の「ルールブック」議論の中で、最後まで積み残された、「市場メカニズムのルール」などの議論について結論を得ることです。

「1.5度」を目指したさらなる野心強化に向けて

会議直前に発表された国連報告書においては、各国が、それぞれ掲げる2030年削減目標を達成したとしても、世界全体の排出量は2030年に2010年比で13.7%も排出量は増加し、このままでは、世界の平均気温は2.7度上昇してしまうという警鐘が鳴らされました。

高まる危機感の中で開催されたCOP26では、会期中に各種の研究機関が、もし各国が長期で掲げているネットゼロ目標に真剣に取り組めば、気温上昇を1.8~1.9度に抑えることが可能になるという試算を出す一方、現状の政策や2030年目標は全くそれに合致していないことも示しました。

このため、会議参加者、そして会議を様々な場所から見守る人々は、今回のCOP26という会議が、温室効果ガス排出削減強化に向けて明確なメッセージを出せるかどうかに注目していました。

COP26において採択された諸決定のうち、議題全体に関わる重要な決定は、表紙になるような決定という意味で、「カバー決定」と呼ばれています。このカバー決定において、COP26は、削減目標の強化にかかわり、大きく2つのメッセージを出しています。

1つは、世界の目標としての「1.5度」の強調です。

2015年に採択されたパリ協定はその第2条において、世界全体の目標を「平均気温を2度より充分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」と定めています。

しかし、その後の科学的知見の積み重ねを受けて、気候危機の被害を最小限に抑えるためには、1.5度に抑えることがより重要であるという認識に移りつつあります。今回は、その世界的潮流を反映し、カバー決定もこの1.5度に抑えることの重要性を「認識」した決定となりました。世界の気候変動対策の基準が、事実上「1.5度」にシフトしたことを示しています。

もう1つは、継続的な「2030年目標の見直し」です。

今回のCOP26に合わせて、多くの国が、既存の2030年目標の見直しを行い、強化してきました。日本もそのうちの1つです。しかし、まだそれができていない国もあることに加え、強化された目標を反映したとしても、「1.5度」に抑えるという目標には届かないことが分かっています。

このため、カバー決定は、2022年末までに、2030年目標を「再度見直し、強化すること」を各国に要請する内容となりました。次回のCOPの場では、そのための閣僚級会合を開催することも同時に決め、世界のリーダーたちに、今一度、削減目標の強化を求めていく流れとなりました。

もちろん、「1.5度」の強調や「削減目標の再強化」は、実施されなければ何も現状を変えることにつながりません。COP26のカバー決定が出すこのメッセージに、各国がどこまで真剣に答えるか、会議の後の今後の各国の動きが重要となってきます。

今回のカバー決定において、もう一つ特筆すべき、異例の措置となったのが「対策のされていない石炭火力を減らし、非効率な化石燃料補助金の廃止すること」を呼びかけたことです。両者とも、これまでのG7やG20の際の文言を踏襲しつつ、途上国の事情を考慮したものではありますが、各国の個別の政策に関わる事項は避けたがる国連の場で、こうした特定の燃料の廃止を呼びかけることは異例であり、それだけ、これらの廃止が気候変動対策にとって必須の条件であることの認識が世界的に広がったといえます。

カバー決定から少し離れたところで、少し残念な結果に終わってしまったのが、約束期間の長さについての決定です。2025年に各国が提出する目標が、2035年目標になるのか、2040年目標になるのかを決めることが予定されていました。

仮に低い目標になってしまった場合、2040年までそれが固定されてしまうこと避ける意味では、2035年目標でそろえていくことが望ましいと環境NGOは考えていましたが、2035年目標とすることを「奨励する」という表現にとどまりました。

適応や資金支援などの強化のメッセージも

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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