「ESG金融大国の実現を」:環境省ESG金融会合

環境省が3月10日、「ESG金融ハイレベル・パネル」を都内で開催した。「ESG金融大国」の実現に向けて、直接金融と間接金融の垣根を超えた金融・投資業界と国の連携の場を築くのが目的で、今回が2回目。当日の会合では、「ESG情報の開示促進」「ESGを踏まえた地域金融の拡大」などの意見で一致した。(オルタナ総研コンサルタント=室井孝之)

ESG金融ハイレベル・パネル

2015年、気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」や「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたことなどを受け、環境・社会・ガバナンスのESG課題を考慮した金融が、世界的潮流になってきている。

日本では2015年、世界最大規模の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、投資の意志決定プロセスにESG要素を組み入れるべきとする責任投資原則(PRI)へ署名したことを契機に、ESG投資が広がってきた。

こうしたなかで環境省は2018年1月、金融市場の主要プレーヤーの意見交換や議論の場として「ESG金融懇談会」を立ち上げ、同年7月に「ESG金融大国を目指して」と題する提言を発表した。

提言の骨子は、脱炭素社会、持続可能な社会に向けて、「直接金融」において先行するESG投資を拡大するとともに、「間接金融」においても地域金融機関と地方自治体との協働などを通じたESG融資を実現していくことだ。

株式や債券などの商品を通じて投資家がお金を直接出資する「直接金融」の分野では、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を踏まえた情報開示」や「グリーンボンド市場拡大」、「機関投資家によるエンゲージメント」などの提言が示された。

さらに、銀行などの金融機関が預金者から集めたお金を貸し出す「間接金融」の分野では、「顧客のESG課題や地域のSDGs視点でのビジネスモデル構築」や「地域の収益確保」といった点が提言されている。

これらの提言を踏まえ、国との連携や議論を加速させ行動に移していく場として2019年2月に設置されたのが、「ESG金融ハイレベル・パネル」だ。

このほど開かれた第2回パネルで、清水博生命保険協会会長(日本生命保険社長)は、「生命保険業界の気候変動対応の底上げを図るべく『はじめての気候変動対応ハンドブック』を作成し、TCFDによる気候関連情報開示の必要性を示した」と述べた。

藤原一朗第二地方銀行協会会長(名古屋銀行頭取)は、「地域金融機関の金融仲介機能、コンサルティング機能の発揮は、地域課題解決に資する」とした上で、「地域企業に対して、ESG課題解決に資する知見を提供することやファイナンスの支援は、地域金融機関の使命だ」と強調した。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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