ボルネオの自然、日本の消費者と守る

◆サラヤ×ボルネオ保全トラスト・ジャパン

生物多様性の宝庫であるボルネオ島では、アブラヤシプランテーションの拡大によって野生動物が絶滅の危機に瀕している。サラヤは2006年に環境保護団体と「緑の回廊」プロジェクトを立ち上げ、土地を買い取り、残った熱帯林を保全する取り組みを開始。長年の活動が実を結び、買い取った土地90ヘクタールがマレーシア・サバ州政府の野生動物保護区に認定される見込みだ。 (オルタナ副編集長・吉田 広子)

ゾウを保護するBCTJの青木崇史事務局長

「サバ州北東部を流れるキナバタンガン川に向かって地方空港から車で2時間。走っても走っても目に入るのはプランテーションばかり。とにかく広大で、地図の印象とは全く違う。ここがかつてはすべて熱帯林だったことを思うと、多くの生物多様性が失われた現実にショックを受けた」

サラヤのパートナー、認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン(BCTJ、東京・品川)の青木崇史事務局長は、初めてボルネオを訪れた2013年12月当時を振り返る。

オランウータンにボルネオゾウ、テングザル――。生物多様性の宝庫ボルネオでは、288種以上の陸上哺乳類、688種の鳥類、260種以上の爬虫類、180種以上の両生類、1万5千種以上の植物、数えきれない昆虫たちが生息する。

だが、この50年ほどでその姿は一変。1960年代から木材調達のために大規模な熱帯林の伐採が行われ、1980年代に入るとパーム油を生産するためのアブラヤシプランテーション開発が急速に進んだ。その結果、ボルネオの熱帯林は2005年には60%にまで減少。多くの動植物が絶滅危機に瀕している。

土地買い取り自然を残す

サバ州北東部を横断するキナバタンガン川沿岸は大規模なプランテーション開発がされた

この現状を知ったサラヤは2004年、ボルネオの生物多様性保全プロジェクトを開始。2006年にはサバ州野生生物局と協力し、環境保護団体「ボルネオ保全トラスト」(BCT)を立ち上げた。BCTJはその姉妹団体だ。

「緑の回廊プロジェクト」は、キナバタン川流域沿いに動植物のための生息域を確保、保護する試みだ。キナバタンガン川流域に点在する保護区と保護区の間の土地を買い取り、分断された熱帯雨林をつなげていく。
「環境保護の観点から見れば熱帯林のままであってほしいが、産業のない現地の人にとって農園は生活の糧。だからこそ、環境保護を盾に無理強いはせず、適切な価格で土地を買い取るようにしている」(青木事務局長)

州政府の保護区に認定へ

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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