食や農業に関心の高い方の間でSNSでも話題になっている種苗法の改定。不安に思う農家さんや消費者の方が多いのではないでしょうか。そもそも、種苗法とはなんなのでしょう?今回の改定のポイントや問題点は?日本の種子を守る会アドバイザーの印鑰智哉(いんやく・ともや)さんに、種苗法改定が農業や私たちの食にもたらす問題や、改定後も私たちにできることについてお話を伺いました。

そもそも種苗法とは?
種苗法とは、野菜やくだもの、穀物、きのこや花などのすべての農作物の種や苗に関する法律で、新たに開発された品種を農水省に出願して、それが認められて「登録品種」となると、その独占的販売権が25年(樹木の場合は30年)認められます。つまり、開発した人の知的財産権を守り、その種苗がその権利を守って市場で流通できるようにするための法律と言えます。
この法律の規制の対象は、競合する種苗会社、種苗の流通会社や市場向けに生産する農家の人々となります。家庭菜園や学校での栽培など、市場流通を目的とせず、自家消費を目的とした栽培や、新品種開発のため、あるいは研究のためは対象外となります。
今回の法改定の目的を農林水産省は日本の農産物の海外流出を防ぐためだとしています。
2018年には、これとは別の「種子法(主要農作物種子法)」という法律が廃止されたことを覚えている方もいるかもしれません。
種子法は、日本の食を支える主要農作物であるお米、麦類、大豆の種子の安定生産・供給を目的とし、優良な品種の種子の生産責任を公的機関に義務付ける法律です。この法制度のおかげで戦後は地域に合った多様な品種の開発や安定供給がなされ、農家は種子が足りなくなる心配はなかったのですが、同法律は維持を求める多くの声にもかかわらず2018年に廃止されてしまいました。民間企業が種子事業に投資しやすくするため、とされています。