コロナ禍でがんばる「まちの社員食堂」、未来図は

J R鎌倉駅から徒歩2分。御成通りを一本入ったところにある「まちの社員食堂」には、昼時になると、入れ替わり立ち代わり鎌倉で働く人たちが集まる。(筆者撮影)

株式会社カヤック(神奈川県鎌倉市)が陣頭指揮を取り、2018年にJR鎌倉駅から徒歩2分の場所に開店した「まちの社員食堂」は、鎌倉市で「働く人」のために作られた共用社員食堂だ。鎌倉市内の企業25社が会員として出資し、地元飲食店が週替わりで昼と夜の食事を提供する。「食堂を通じて会社の垣根を越えた人的交流を図りたい」という食堂の2年半の間に、何が見え、コロナ禍でどんな変化が起きたのか。(寺町幸枝)

カウンター越しに店のスタッフと会話する人や、隣り合わせた人同士がご挨拶。取引先に、社員を紹介するといったコミュニケーションも気軽に行われているという。(©︎まちの社員食堂/Kayac Inc.)

働く人同士の交流の場として

「面白法人」と自称するカヤックは、ウェブやゲーム制作、さらにデジタルの広告やマーケティングを手がける会社だ。神奈川県鎌倉市で唯一の上場企業である同社は、2018年に社員の増加に伴い「社員食堂」の設置を検討した。単なる福利厚生としての意味合い以上に、鎌倉駅周辺で社食を持つ意義は大きい。

観光地という土地柄、駅周辺のレストランや食事処はいわゆる観光地価格に加え、平日でも大勢の観光客で溢れ、昼食時は激混みということもあるからだ。「せっかく地元に美味しい食事ができる店があっても、利用できる機会が少なかった」と話すのは、カヤックの広報部長で「まちの社員食堂」ディレクターでもある渡辺裕子さんだ。

渡辺さんが考えたのは、コミュニティへの貢献を中心にした社食作り。「社食を作るなら、働く人同士の交流の場にしてはどうか」という声が社内から上がり、調べてみると小規模の企業が集まる鎌倉には社食を持たない企業が多かった。

また、1000人を越える就労者を抱える鎌倉市役所が、まちの社員食堂の開業を検討している数年前に、職員食堂を閉鎖していたという状況もあった。そこでカヤック社員だけでなく、鎌倉で働く人が手軽に利用でき、働く人の交流の場ともなる場所作りが始まったという。

開設に当たり、会員企業を募って、賛同した企業の従業員であれば会員割引価格で食事を取れるようにした。会員企業の従業員でなくても、鎌倉で働く人であれば入店は可能だ。入店時には名刺や社員証を提示し、訪れた人同士のコミュニケーションを推奨するというスタイルだ。食堂で振る舞われる食事は週替わりで地元にゆかりのある食堂やレストランなどが担当し、日替わりのメニューを提供している。

コロナ禍で「鎌倉で働く人の定義が変わった」と話す渡辺さん。鎌倉以外の企業に勤めながらも、リモートワークで鎌倉を拠点に働く人が増えつつあることから、「まちの社員食堂」の利用者の条件を見直し、現在は鎌倉でリモートワーク中の人も入店可となった。

2020年12月の最終週は、鎌倉の製麺会社「今村製麺総本家」が担当した(©︎まちの社員食堂/Kayac Inc.)

コロナ禍でもコミュニティファーストを実現

teramachi

寺町 幸枝(在外ジャーナリスト協会理事)

ファッション誌のライターとしてキャリアをスタートし、米国在住10年の間に、funtrap名義でファッションビジネスを展開。同時にビジネスやサステナブルブランドなどの取材を重ね、現在は東京を拠点に、ビジネスとカルチャー全般の取材執筆活動を行う。出稿先は、Yahoo!ニュース、オルタナ 、47ニュース、SUUMO Journal他。共同通信特約記者。在外ジャーナリスト協会(Global Press)理事。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #新型コロナ

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..