また、その逆も然り。これに対して自治体は、日本では地方創生の推進ツールとしてSDGsをまち・ひと・しごとの創生、地域での「自律的循環」(資金の還流と再投資)のために役立てる(そこまで至らない場合も多いが)。

喩えていえば、企業はパートナーと事業連携していわば「線」を繋ぐ。さらにSDGsをヒントに活動の場を社会課題の領域に広げ「面」として事業を展開する。これに対して自治体は、そもそも地域という「空間」が染みついている。

困りごとをSDGsに倣い地域課題に置き換えて、空間内の密度=生活のあらゆるシーンでの利便性とその持続性を高め、地域での暮らしの安定化や活性化のため汗を流す。

では、企業と自治体、どう手を携えるのか。つまり、SDGsを通じて面が立体的に厚みを持った積木を、どう束ねて地域という枠に整えて入れ込むか。自治体自身が自立的循環を駆動させるものを自ら生み出しにくいのだから、どのように積木を集め、組み合わせ、地域空間を充足するか。自治体は問われる。

なるほど、プラットフォームとしての産官学、その中核の自治体。耳心地は良い。ただ、自律的に循環するか心もとない。著者は「金労言」、金融・労働・メディア、つまりカネ・ヒト・情報を組み合わせる。パートナー間を流れるフロー要素を加え、ダイナミズムを吹き込む考え方が新鮮であり本書の肝だろう。

もちろん、このモデルが成り立つ要件のひとつは、著者が言う共通言語としてのSDGsの理解であろう。この意味で本書や前著が果たす役割、意義、そして貢献は大きい。共通言語として理解し合えば、立場は違えども同じ市民なのだから、最大公約数としての共有感を持ち皆自分ごとにしていけるのではないか。

ただその際、国連であれ地域であれ、例えばその立場の目的とかけ離れ自分勝手化、独りよがり化するリスクをはらむ。プラットフォーム・フローモデルを含めそこを学としてどうとらえるか。学=学術の立場からSDGsをどうとらえ、何をすべきか。企業、自治体に続く著者の次の目線に期待したい。

文・甲賀聖士 昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員

1990年明治学院大学国際学部卒。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科、早稲田大学大学院社会科学研究科に学ぶ。国際政治学修士。専門は平和研究・人間の安全保障研究。企業やそこで働く人々、女性もグローバル社会の重要なアクターと捉え、その行動が平和や社会的価値の創出に貢献する可能性を探る。主な論文に「平和の探求―平和の発展と浸透の視点から」、「性役割意識と社会貢献意識を結ぶ『媒介意識』の仮説検証 ―就労前の女子大学生における2つの意識の関係性分析―」等。日系企業で事業管理、安全保障輸出管理、J-SOX、CSR等にも従事。

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