過疎化が進む地方自治体も移住者誘致にあの手この手の趣向を凝らしている。長野県佐久市は「リモート市役所」をオンライン上のサロンとして開設。「Slack」というチャット機能を駆使して、移住や暮らしの相談などに対応している。この「リモート市役所」の中には、移住どうする課や子育て課、アイデア課などがあり、きめ細やかに移住希望者の疑問に応える体制を整えている。

兵庫県豊岡市は町づくりそのもので、移住希望者をひきつけている。2019年からは豊岡演劇祭を開催。2020年4月にオープンした平田オリザ氏率いる劇団青年団の新拠点「江原河畔劇場」では定期的に演劇を上演。2021年4月には国公立初の演劇・ダンスの実技を学べる大学、芸術文化観光専門職大学が開校など、「演劇の町」を前面に押し出して、クリエイターなどの移住誘致を進めている。

とはいえ、増村氏は誘致成功の基本は「人」だという。「北海道下川町は、『SDGs未来都市』として環境への取り組みで有名ですが、移住者誘致にも積極的です。数年前に取材した時に、町で移住の窓口の担当者の方が、本当にまめで、手厚くて優しい…一言で言えば丁寧なのです。それが移住を決める重要なポイントだと感じました」と語る。

その上で、今後地方移住が定着・拡大する条件は、「上京する交通費がぐっと安く抑えられること、企業の本社機能そのものが地方に移転されること、個々人がセルフ・プロデュースできるスキルを磨くこと」(増村氏)という。

高橋公・ふるさと回帰支援センター理事長

暮らし優先の価値観への転換が進む

一方、2002年から移住相談の窓口になっている認定NPO「ふるさと回帰支援センター」の高橋公理事長は、近年、移住相談者数が急増した背景を「高度成長期には都会に夢や希望があった。しかし、今や努力しても報われない社会になり、大都会の機能が壊れてしまった。その結果、大都会にいても意味がないという働き盛りの人が増えたためだ」と指摘する。

その高橋氏は、移住誘致が成功するには「自治体が、空き家をリフォームして空き家バンクをつくる、仕事を用意する、率先して排他的体質を変える意識改革をして移住者応援団をつくること」だと語る。さらに、「仕事優先から暮らし優先の価値観への転換が起きている昨今、地方移住ブームは一過性のものではなく、コロナ後も定着・拡大していくだろう」(高橋氏)という。

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