「適切な情報提供がない」というのは、医療専門職の育成において、性の多様性について学ぶことが必須ではないことに源流がある。自分が学んでいないことは、伝えられない。
医師法19条は「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」とされているので、LGBTへの診察拒否はあってはならないことであり、医師法に抵触する恐れがある。
また、日本看護協会の「看護者の倫理綱領」には「看護者は、国籍、人種・民族、宗教、信条、年齢、性別及び性的指向、社会的地位、経済的状態、ライフスタイル、 健康問題の性質にかかわらず、対象となる人々に平等に看護を提供する。」とあるが、これだけ差別的な対応を経験している人が多いのは、現場に性のあり方を尊重する認識が浸透していないことの証左である。
もしもの時に、自分が望む性別で扱われないかもしれない、自分のパートナーが家族として扱ってもらえないかもしれない、というのは悲しく、恐ろしいことだ。だからこそ、受診をためらう当事者も現実にいる。
しかし、こうした状況が、健康に関する格差につながってしまう。 厚生労働省のサイトを見ると、新型コロナウイルスのワクチン接種のお知らせ用紙に性別欄はない。しかし、接種にあたっての問診票では、性別欄が男女のみで、チェック形式である。これを乗り越えられないと接種できないとしたら、どうだろう。
日本での調査はまだないが、私はアメリカと同様、LGBTのワクチン接種率が低くなるかもしれないと考えている。LGBTが医療において高いハードルを感じなくてもすむよう、医師会や行政にLGBT施策の推進をお願いしたい。
◆レポート
https://nijibridge.jp/wp-content/uploads/2020/11/kinki-lgbt2020_report.pdf