※この記事は2021年3月30日に発売する雑誌オルタナ64号「グリーンな脱炭素 グリーンな脱炭素」の先出し記事です。オンライン有料会員に入会されると、本誌も無料でご自宅やオフィスに郵送します。
CO2を回収して地中に貯蔵する「C C S(カーボン・キャプチャー&ストレイジ)」や、これに利用技術を含めた「CCUS」も注目されている。米国や欧州各国も「カーボンゼロ」実現のために導入を進めるが、3つの問題点がある。
第一にコストだ。経済産業省の試算では、一定の前提条件の下で05年に試算されたコストは6.3円/㌔㍗時と、化石燃料の発電コストに匹敵する。16年前の試算だが、今も大きく変わっていない。
第二に、日本が特異的な地震国であることだ。日本列島は「北米」「ユーラシア」「太平洋」「フィリピン海」という4つのプレートがぶつかり合い、地震が頻繁に起こる。日本列島自体も年間数センチずつ動いている。
CO2の貯蔵も、何万年─何十万年後に、プレートの移動や地震によって、再び大気中に漏れ出す可能性は否定できない。いわば「悪魔の証明」だ。その検証は超長期に渡る。それだけの期間、データの紛失や偽造を防ぐ仕組みは現在のところ、全くない。
第三に、地中に貯蔵する時にCO2を溶かし込む「アミン溶液」の存在だ。主に使用されるモノエタノールアミン(MEA)は劇物指定されている可燃性の有毒物質だ。このアミン溶液が地下水脈や温泉脈に触れると、地上で利用する水道や温泉にMEAが混入する可能性も否定できない。CCS/CCUSはまだ、世界でも商用化の事例は少ない。
海外での実験は石油の油田跡が多いが、日本ではそのような土地はない。それにも関わらず、CCS/CCUSを前提に、化石燃料の存続とカーボンゼロの同時実現を主張するのは、論理的に無理がある。