気候ネットワークなどの環境NPOは29日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)にパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を策定し、開示することを求めた株主提案を提出したと発表した。大手メガバンクに気候変動に対する取り組みを求める株主提案は、昨年のみずほに続いて2行目となる。MUFGは石炭火力事業へのプロジェクト・ファイナンスをゼロにする方針を掲げているが、国内外の化石燃料や森林破壊に関連する事業に多額の資金提供を続けており、過去2年間で石炭産業への融資総額は世界3位に位置する。(オルタナS編集長=池田 真隆)

今回、MUFGに気候変動に対する株主提案を行ったのは、気候ネットワークや個人株主3人。MUFGは、環境方針やサステナビリティに関する方針を定め、石炭火力事業へのプロジェクト・ファイナンスをゼロにする方針等を掲げている。しかし、国内外の化石燃料や森林破壊に関連する事業に多額の資金提供を続けていることで、NGOなどから批判されていた。
過去2年間で、MUFGの石炭産業への融資総額は世界3位、過去5年間の化石燃料部門への融資・引受額は世界6位、過去4年間のパーム油産業への融資・引受額は世界7位だ。気候変動を加速する事業に世界最大規模の融資・引受を行っている。
同行の方針では、パリ協定が定める地球の気温上昇を1.5℃に抑える目標と整合しておらず、NGOからは化石燃料や森林破壊への投融資を撤廃すべきという指摘が集まっていた。今回の株主提案では、同行が気候変動への投融資を開示することで、投資家が同行の投融資にかかる気候変動リスクを適切に評価でき、同行が気候変動リスクを企業価値の向上につなげることを目的とした。
大手メガバンクに気候変動に対する取り組みの開示を求める株主提案は、昨年のみずほフィナンシャルグループに続いて2行目となる。この提案は否決されたが、賛成率は34%で、3人に1人が支持を表明していた。
近年、海外の金融機関らによる石炭火力発電事業への支援中止や投融資からの撤退が進んでいる。最近では、英HSBCが、2040年までに石炭火力発電や発電用石炭開発への融資を段階的に廃止する方針を決定した。米シティグループは、石炭火力の拡大を計画する新規顧客への融資を2021年以降引き受けず、今後20年間でほぼすべての石炭火力企業への融資を段階的に廃止する計画を記した方針を、米国大手銀行として初めて発表した。
株主提案を行った350.org Japanの横山隆美代表は、「気候危機の解決には、パンデミックへの対応と同様に、科学者の知見を取り入れることや、全てのセクターを取り込んだ迅速かつ大胆な対策が必要です。気温上昇を1.5度に抑えるのは時間との勝負であり、ネガティブ・エミッションなど今はない技術に頼ることは若い世代や将来世代に対する責任放棄と同じことです。経済に対し非常に大きな影響力を持つMUFGは、気候危機問題に対し国連責任銀行原則に基づき、責任を持って解決に取り組む必要があります」と訴えた。
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株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長
1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「エコアクション21」オブザイヤー2021審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。執筆記事一覧