環境省は4月、「ESG地域金融実践ガイド 2.0」を公表した。「ESG地域金融促進事業」の実例を示し、地域金融機関がESG地域金融に取り組むための手引きである。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)
地域経済は脱炭素化、コロナ禍という大きな環境変化に直面している。
地域金融機関は地方自治体等と連携し、ビジネスにつながる可能性をもった地域ESG課題を積極的に掘り起し、ファイナンスに関する豊富なノウハウを生かし、新たな事業構築に関与・協力する「ESG地域金融」が求められる。
環境省は令和元年度から「ESG地域金融促進事業」を実施し、環境・社会にインパクトがあり、地域の持続可能性の向上や地域循環共生圏の創出に資する地域金融機関の取組を支援している。
ガイドは同事業の実例を示し、地域金融機関が地域課題の掘り起こしや事業性評価に基づく融資・本業支援等の金融行動においてESG要素を考慮し、ESG地域金融に取り組むための手引きである。
環境省は、ESG地域金融の実践方法として3つのアプローチに整理した。
アプローチ1.「地域資源を活用した課題解決策の検討・支援」では、 全国の市長村で初めて「気候変動適応センター」を設置した那須塩原市、地元事業者が集まるプラットフォームを設置し、気候変動への対応など持続可能な地域の構築に向けたビジョンを策定した「栃木銀行」が紹介された。
アプローチ2.「主要産業の持続可能性向上に関する検討・支援」では、京都の主要産業である観光業のあるべき姿をヒアリングで特定し、事業者のあるべき姿に向けた支援の仕組みを構築した「京都信用金庫」等が取り上げられた。
アプローチ3.「企業価値の向上に向けた支援」では、養殖漁業に対するESG要素を考慮した事業性評価の導入及びモデルを構築した「愛媛銀行」等が例示された。
2020年度支援先は、上記に加え北海道銀行、岩手銀行、東和銀行、きらぼし銀行、山梨中央銀行、北陸銀行、浜松いわた信用金庫、奈良中央信用金庫の11行である。
2019年度支援先は、大阪信用金庫、広島銀行、東和銀行、栃木銀行、西日本シティ銀行、みなと銀行、鹿児島銀行、滋賀銀行、福岡銀行の9行だった。