「SDGs10年延長論」が浮上、国連がFSDR報告書

国連がこのほど発行した「持続可能な開発のための資金調達報告書」(FSDR)の2021年版で、「SDGsの目標年が10年延長される可能性」に言及した。新型コロナでSDGsの17ゴールへの対応が大きく遅れたことを理由に挙げた。まだ報告書ベースに過ぎないが、今後、同様の議論が活発化する可能性もありそうだ。(オルタナ編集部・山口勉)

コロナ禍は世界中でSDGsの取り組みにも甚大な影響を与えている

国連は2015年9月の総会におけるSDGs採択時に、目標年を「2030年」と定めた。今回の報告書では「SDGs達成にはもう10年必要か」との表現で、目標年を「2040年」に10年間延長する可能性に触れた。

最大の理由は、新型コロナの感染拡大により、富裕国と貧困国の格差が拡大していることだ。これにより、ゴール1「貧困をなくそう」だけでなく、他のゴール達成や改善に向けての活動が妨げられた。

「10年後の未来に押しやられる可能性」

パンデミックから回復しつつある国がある一方で、新型コロナが経済を直撃し、経済の停滞や緊縮財政などによって社会課題の解決が妨げられるという悪循環に陥った途上国も少なくない。

同報告書は、「これによりSDGsの達成がさらに10年後の未来に押しやられる可能性がある」と警告した。

その上で、「すべての政府に対し、持続可能な開発に向けて行動をよりよく調整するために税金を活用する」ことを呼びかけており、「炭素税」など、より持続可能な開発に沿った税の新設や活用を促している。

同報告書は、このほか「国民への投資」、「インフラとイノベーションへの投資」、「政策と金融に関するグローバル・アーキテクチャの改革」という3つのテーマを提言した。

「国民への投資」については、家計の脆弱性がSDGsの進捗不足と密接に関係しており、政府は社会的保護と健康への支出を優先すべきだと提案している。

報告書の著者らは持続可能で弾力性のあるインフラへの投資は、現在、低金利の先進国では「十分に実現可能」であると指摘している。

その他の提言としては、持続可能な開発投資のためのツールとして、公的開発銀行(PDB)をよりよく活用することや、民間企業の新しいビジネスモデルを促進することなどが挙げられている。

著者らは、政策立案者は、企業が株主のための短期的な財務的利益だけに焦点を当てるのではなく、環境や社会への影響を考慮するための措置を講じることができるはずだと述べている。

「持続可能な開発のための資金調達報告書」(FSDR)――「SDGs達成にはもう10年必要か。いますぐ行動を」ーーの全訳は次の通り。

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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