2021年5月、環境性能に優れた自動車の税が優遇される「エコカー減税」の適用期間が延長されました。青山学院大学経済学部の松本茂教授に、エコカー減税や省エネ家電の購入助成といった政策が、経済面と環境面にどのような影響を与えたのか、お話をうかがいました。(旭硝子財団)

ハイブリッド車普及に貢献するも、現在は効果に疑問

青山学院大学経済学部の松本茂教授

経産省の主導で2009年(平成21年)度にスタートしたエコカー減税。排ガス性能や燃費性能に優れた自動車に対して、購入時にかかる「自動車取得税」、購入時と車検時にかかる「自動車重量税」を優遇する制度で、性能基準を変更しながら、今日まで制度が延長されてきました。

環境経済学を専門とする松本教授は、エコカー減税について「ハイブリッド車の普及に一定効果を及ぼしたものの、10年経った現在はあまり効果的な政策とはいえないのでは」と話します。

「エコプロダクツの購入助成政策による消費者行動を調査してきてわかったことは、これらの制度は、ある程度お金を持っている人々がモノの買い替えに利用している、ということ。私たちが調査をした2012年時点で、エコカー減税はハイブリッド車への買い替えに間違いなく貢献していました。しかし、ある程度ハイブリッド車が普及した現在、エコカー減税によって、より環境負荷の低い電気自動車やプラグインハイブリッド車に買い替えようという動きは限定的だと思います」

教授は、電気自動車の普及のためには、まずはインフラの整備が不可欠と指摘します。いくら高性能な電気自動車が開発されようとも、充電設備が整っていなければ消費者行動を変えることはできないだろうと話します。

「ヨーロッパの事例では、政府はインフラの整備にまずお金を使っています。日本はそれが逆転してしまっているので、電気自動車の普及にはまだまだハードルがあると思います」

環境経済学者の視点から考えるエコカーの未来

松本教授によると、環境負荷を軽減するはずのハイブリッド車にも落とし穴があるそうです。

「“ハイブリッド車のリバウンド効果”というものがあります。ハイブリッド自動車を購入して燃費が改善すると、走行距離が伸びる傾向があるのです。買い換える前の車に比べてエネルギー効率が10%よくなったとしても、走行距離が伸びるので、実際のエネルギー効率は6〜7%程度の改善と考えたほうがよいでしょう」

こうしたエコプロダクツのリバウンド効果は、車のほかエアコンなど、ほかの消費財でも見られる現象とのこと。省エネエアコンを購入した世帯を追跡調査した結果、購入前に比べてエアコンの使用時間が伸びていたそうです。

教授は、自動車と環境問題について、もう少し問題を多角的にとらえることも必要と考えています。自動車は、二酸化炭素排出による温暖化の問題だけでなく、大気汚染やアスファルトが削れることによるPM2.5の問題、事故リスクの問題なども抱えているからです。

「ハイブリッド車によって二酸化炭素の排出が抑えられても、リバウンド効果で走行距離が伸びればそのほかの問題のリスクが上昇します。もう少し視野を広く持つ必要があると感じています」

松本教授にエコプロダクツの購入助成と消費者行動についてお話をうかがった旭硝子財団の発行する「af Magazine」の全文は、こちらからご覧いただけます。

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