先週採決が見送られた入管法改正法案は、市民の活動やSNSなどで挙げた声に支援の輪が広がり、野党が呼応した成功事例となった。市民の声を新興ウェブメディアが取り上げ、その広がりに大手メディアが追随したことも背景となった。近年差別や人権などに関する市民の声の多くがSNSから生まれている。それをいかに拾い上げるかメディアは試されている。(オルタナ副編集長・松田慶子)

SNSを活用して市民が声を集められるようになった
(写真はChange.orgの入管法改正への反対署名を集めたキャンペーン画面)

日本の入管収容および難民認定制度は、国連からもたびたび指摘を受けてきた。今回の改正法案も、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が国際人権基準に則って見直すよう、日本政府に求めていた。

そうしたなかで名古屋出入国在留管理局に収容されたスリランカ人女性が亡くなる事件が起こった。市民が実際の事件を目の当たりにするなか、改正法案は審議入りすることになり、大きな議論に発展した。

ツイッターでは「#難民の送還ではなく保護を」「#入管法改悪反対」「#JusticeForWishma」など数々のハッシュタグが立ち上がり、支援者や有名人にも支援の輪が広がった。これに呼応してニューズピックスやバズフィードなどのウェブメディアが法案の問題点や市民の声を紹介。腰の重い大手メディアも追随することになった。

人権問題で苦しむ人々は、基本的に声をあげにくいマイノリティーで、「彼らの声を届ける役割であるメディアの存在は欠かせない」(ヒューマンライツ・ナウ高橋済事務局次長)。人権問題は既存の大手メディアはなかなか取り上げない領域だが、市民や支援団体はSNSを中心とした新たな輪のなかで問題提起しつつある。

署名サイトChange.org Japanが発表した2020年の活動報告でも、「日本はオンライン署名で声をあげた人の増加率が(同社のオフィスのある20か国のうち)世界一に」なったとし、「多くの人が声をあげ、知られなかった問題の可視化」に貢献した。かつてないほど活発になった市民の声を、今度はメディアがそれぞれの強みを生かしてどのように拾いあげ「情報から遠い理性的な人々にいかに届けるか」(高橋氏)が試されている。