2020年7月にスーパーやコンビニなどでレジ袋有料化が義務づけられて、まもなく1年が経つ。1年でどの程度、レジ袋は削減され、その効果はどれほどあったのだろうか。また、奈良公園でレジ袋を誤食したシカが4カ月で9頭も死んだというあの被害は、その後改善されたのだろうか。(編集委員・栗岡理子)
有料化によるレジ袋削減効果
レジ袋有料化の効果について、小泉進次郎環境相は6月1日の参議院環境委員会で石井準一議員の質問に対し、このように回答した。
「1週間以上レジ袋を使わない人の割合が3割から7割に変わった。さまざまな環境負荷の低い取組を始めるきっかけとしても、効果は大きかったのではないかと認識しています」。
具体的なレジ袋辞退率は、有料化になる前のコンビニは23%だったが、有料化後は75%に変わり、スーパーは57%から80%に、ドラッグストアは84%になったとのこと。削減はそれなりに進んでいるようだ。
奈良公園のシカへの影響は
それでは生物への被害も減ったのだろうか。気になって、天然記念物「奈良のシカ」の保護育成に取り組む一般財団法人奈良の鹿愛護会に問い合わせた。
奈良のシカはレジ袋を誤食し、最悪の場合は死に至ることが以前から報告されている。奈良公園内ではシカに「しかせんべい」以外の食べ物を与えることは禁止されているが、人間の食べ物を与えてしまう人もいる。
その結果、パンや菓子などの匂いを覚え、匂いのついたレジ袋さえも食べてしまう。2019年3月から6月までの4カ月間で死んだシカ14頭のうち、9頭のお腹から大量のレジ袋などが見つかった。
このような誤食によるシカの死亡がレジ袋有料化後に減ったのか尋ねたところ、愛護会の職員で獣医師の丸子理恵氏は「まだ減ったとはいえない」とのこと。
2020年4月から2021年3月までの間に、原因不明で死亡したシカを8頭解剖したところ、5頭の胃の中からレジ袋などプラごみの塊が出てきたそうだ。おととしは25頭中16頭の胃からプラごみの塊が見つかったということなので、比率としてはそう変わらない。
プラごみの誤食によりシカが死亡するのは、何年にもわたって食べ続けるためで、1年程度ではレジ袋削減効果はよくわからないそうだ。しかも、シカにとって危険なプラスチックはレジ袋だけでなく、パンや菓子の包装袋なども同様で、吐き出せない状態になってお腹にたまることがあるという。
それでも陸上はごみを見つけたら人間が掃除しやすい環境にあるが、ごみを取り除きにくい海で生きる生き物たちは、プラごみの被害をより大きく受けていると思われる。
しかし、使い捨てプラスチックの便利さに慣れた私たちは、いまだにレジ袋だけでなく、ストローやトレイ、包装袋、ペットボトルさえも手放せずにいる。人間が使い捨てを続ける限り、生物の被害は続きそうだ。