上場各社の株主総会がピークを迎えるなか、会場周辺では環境NGOなどによる抗議活動が相次ぐ。化石燃料への投融資や人権問題の現状を株主に知ってもらい、経営陣に変革を迫ることが狙いだ。中には株式を取得して総会で株主提案するNGOもあり、新たな「モノ言う株主」として存在感を高めている。(オルタナS編集長=池田 真隆)

FoE Japanがみずほ銀の株主総会の会場前で行った抗議活動 写真:Taishi Takahashi

6月中旬には住友商事とみずほFGの株主総会会場前で、複数の環境NGOが化石燃料事業への投融資の撤退を求める抗議活動を展開した。

25日には三菱商事、29日には三菱UFJ銀行(MUFG)が株主総会を開く。三菱UFJは化石燃料事業へのアジア最大の資金提供者とされ、1週間前から世界各地で抗議活動を繰り広げている。

NGOによる抗議活動のメインテーマは「気候変動」対策の強化だ。そのターゲットは、化石燃料融資が多いメガバンクや石炭火力発電事業を手掛ける商社などだ。

■「パリ協定の『1.5℃目標』に整合していない」

日本の3大メガバンク(MUFG、SMFG、みずほFG)は今春に、新規炭鉱採掘への投融資の禁止など脱炭素化に向けた気候関連ポリシーを改訂した。だが、3行の方針はいずれもパリ協定の「1.5℃目標」には整合しておらず、NGOはさらなる方針の強化を求めていた。

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(米国・RAN)などの調査では、化石燃料関連事業への投融資ランキングで日本の3大メガバンクが上位に入った。MUFGは6位、みずほFGは8位、SMFGは18位だった。

NGOが抗議活動を行うのは、こうした現状を株主に知ってもらい、経営陣にダイベストメントを求めることが狙いだ。

国際環境NGO FoE Japan(東京・板橋)は、みずほ銀が23日に東京国際フォーラム(東京・千代田)で開いた株主総会に合わせて、抗議活動を行った。会場前で自作した大きなバナーを掲げ、地球をモチーフにした被り物を被り、気候変動の問題を株主に訴えた。

FoEの深草亜悠美氏(気候変動・エネルギー担当)は「株主に気候危機というイシューを直接伝えられた。(経営陣に)質問したいからと声をかけてくれる人や写真を撮ってくれた人もいた」と手応えを話す。

深草氏は「気候変動への反応は海外の機関投資家が中心だったが、日本の投資家も徐々に変わってきている。もっと主体的に気候リスクを考えるようになってほしい」と訴えた。

昨年のみずほ銀の株主総会では、環境NGOの気候ネットワークが日本で初となる気候変動の強化を求める株主提案を行った。海外の機関投資家から賛同を得て賛成票は35%だった。過半数を上回らなかったが、話題を集めた。

MUFGの29日の株主総会では、同行史上初となる気候変動についての株主提案に対する投票が行われる。同行はパリ協定の採択(2015年)以降、アジア最大の化石燃料事業への資金提供者だ。

物議を醸しているカナダの「ライン3タールサンドパイプライン」、「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)」などを筆頭に、アジア各国での石炭火力発電事業に資金を提供し続けている。

同行に対する抗議活動の規模は大きい。株主総会の1週間前から、本社がある東京だけでなく、マニラ、ジャカルタ、ニューヨーク、アムステルダム、バルセロナ、ブラジルなどで行われている。

日本で抗議活動を行う350.org Japan(東京・目黒)のボランティアグループ「350 New Eneration」の山崎鮎美氏は、「日本の銀行が、化石燃料産業への支援に大きく加担していることは、日本では積極的に情報を取りにいかない限り、分からない」と話す。

「MUFGの公式サイトやSNSはクリーンなイメージで、一見、気候危機と何も関係がないように見える。だからこそ、私たちはずっと声を上げ続けなければいけない」と語る。

日清食品に「怪しいパーム油は使うな」と抗議

パーム油の調達方針でNGOから改善を求められたのは、日清食品だ。同社は25日、ホテルニューオータニ大阪で株主総会を開いたが、会場周辺に「日清さん、2030年まで問題あるパーム油を使い続けないで!」と記載したバナーを持ったNGO担当者が立ち並び株主に問題を呼び掛けた。

日清食品株主総会で「2030年まで問題あるパーム油を使い続けないで! 」とアピールした

RANが2019年10月に発表した報告書では、インドネシアの熱帯林保護区内で違法に生産されたパーム油を、日清食品のパーム油調達企業が買い取ったことが明らかになった。

パーム油は熱帯雨林の伐採や、そこに生息するオランウータンの絶滅危惧問題、そして現地の子どもたちによる児童労働が20年以上前から問題になっている。日清は2030年までに、認証パーム油への切り替えを表明したが、それが「2030年まで使い続けるのか」という批判を巻き起こした。

RAN日本支部の川上豊幸代表はこの活動について、「トップに声を届けたという意味で、一定の意味がある」と話す。

同社の担当者とは対話を重ねているが、経営陣はその場に出てこないことが多いという。「株主を通して、経営陣に訴えかけることで問題を改善していきたい」と語った。