多様性を尊重する社会の変化は、おもちゃ業界にも起きはじめている。いままで「男の子用」「女の子用」と性別で商品を販売していたメーカーが、次々とジェンダーフリーの商品を販売。より多様なニーズに応じたラインナップを拡充させている。本稿では、ジェンダーフリー化が進むおもちゃと、おもちゃが子どもたちのジェンダー意識に与える影響について考察し、子どもたちの未来に必要なこれからのおもちゃについて考えていきたい。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

理想の女性象から多様性の象徴へ変化したバービー人形

アメリカのおもちゃメーカー、マテル社が1959年に発売し、今なお世界中の子どもたちに愛されているバービー人形。スレンダーなボディとブロンドのロングヘア。美しい女性の象徴としてイメージする人も多いが、近年、美しさやジェンダーへのバイアスがかかっているという批判の声もあがっていた。

そんな社会を映す鏡のように、バービーも時代とともに変化しつづけている。これまで、様々な体型や人種、または車いすや義足をつけたバービー人形のコレクションを発表してきた。

2019年には性別を自由に変更できるジェンダーフリーな着せ替え人形として「Creatable World」コレクションを発売。人形のボディから男女の身体的特徴は排除され、さまざまな肌色とショートへアからロングヘアに切り替えられるウィッグも用意され子どもたちが性別にとらわれることなく、自分の好みでカスタマイズできる仕様になっている。

子ども時代のジェンダー・ソーシャライゼーションとおもちゃ

うまれてすぐの子どもに「男なのに、〇〇」「女だから、〇〇」というジェンダー規範はない。社会や他者との関わり合いの中で、だんだんと感じ取り、自己認識していくことで、ジェンダー規範は身についていく。

この過程をジェンダー・ソーシャライゼーションという。ジェンダー・ソーシャライゼーションは生まれてからの親との関わり、学校、職場と一生涯つづいていくものだが、強い影響を受ける時期が幼少期であるといわれている。

OECDの研究によると、すでに5歳児のなりたい職業には、ジェンダーロールによる偏りが多く見られたという報告がある。また、ニューヨーク大学の研究によると、多くの女子は男子に比べて、5歳前後で自分の性別をポジティブにとらえられなくなり、能力への自信を失い始める傾向にあるという指摘がされている。

この現象は、文化的偏見、メディアによるバイアスなどにより増幅しているという。アメリカでは「Dream Gap」とも呼ばれており、アメリカ以外でも同様の兆候が見られるという。

このように幼少期に社会や他者とどのように接するか、どのような情報に触れるかは、ジェンダー意識の観点からとても重要で、例えば、女の子だからおままごとやお世話人形で遊ぶというジェンダーによる区別は、女は家事や育児をすべきというジェンダーロール意識へとつながる恐れもある。

実際に欧米ではそういったジェンダーによるバイアスをうみださないために、多くのオモチャ売り場は男女別で売り場をわけるのを廃止にしているのだ。

■日本でも進むおもちゃのジェンダーフリー

フィッシャープライスとサンリオの新ブランド「Sanrio Baby」が開催したインスタライブ「#おもちゃに性別いるのかな」は昨年11月に配信されるとともにSNSを中心に大きな話題となった。

タレントのりゅうちぇるさんが自身の子ども時代のエピソードとして、クリスマスに本当は人形が欲しかったのに、親の目を気にして顕微鏡が欲しいといったことを告白。おもちゃとジェンダーに関する違和感とともに、子ども時代に固定観念を植え付けられてしまうことへの危惧を語ると、多くの共感のコメントが寄せられた。

おもちゃ業界でもジェンダーフリーな商品は増えつつあるが、それを選ぶ側、とりわけおもちゃに関しては親の意識も重要になってくる。「#おもちゃに性別いるのかな」のようにおもちゃとジェンダーについて考えるきっかけづくり、日本でも男女別の売り場の廃止などを推進し、ジェンダーにとらわれることなく、子どもたちが遊びたいと思ったおもちゃを選びやすい環境を整えることが必要だ。

子ども時代に触れたジェンダー規範は、その後の人生にも大きな影響をもたらす。性別にとらわれない自由な発想や可能性を広げるきっかけとなるようなおもちゃに、これからより多くの子どもたちが出会えることを願いたい。