国連世界食糧計画(WFP)や国連食糧農業機関(FAO)など国連5機関は、2020年に世界人口の約10%に当たる約8億1100万人が栄養不足に陥ったと推計する報告書を発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2019年の6億5030万人から急増した。こうした食糧危機に貢献しようと、料理教室を展開するABC Cooking Studio(東京・千代田)は、国内初となるWFPとの広報パートナーシップ契約を締結した。(オルタナ副編集長=吉田広子)
SDGs(持続可能な開発目標)の目標2「飢餓をゼロに」では、「2030年までに飢餓を撲滅し、栄養不良をなくすこと」が掲げられている。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で急激に悪化し、特にアジアやアフリカの子どもたちの栄養不足が深刻だ。
増加の要因としては、新型コロナウイルス感染拡大で失業した人が増えたほか、気候変動の影響、内紛や紛争などが世界各地で起きていることなどが挙げられる。
こうした飢餓問題への危機感から、国内・海外に136店舗を展開するABC Cooking Studioは2021年6月、「キッチンから世界を変える」という使命のもと、WFPと広報パートナーシップ契約を締結した。
同社は料理スタジオやSNS、会報誌やウェブサイトを通じて、災害や紛争時の緊急食糧支援、栄養状態の改善、学校給食の提供といった国連WFPの活動内容について情報発信していく。10月16日の「世界食料デー」に合わせて行われるキャンペーンでも、広報支援を行う。
ABC Cooking Studio広報・ブランド戦略部の中谷美緒さんは「ABCの財産は、ここで働くインストラクターの先生たち。コミュニケーションが生まれるABCだからこそ、食を通して社会問題などの難しいテーマも、先生から生徒さまに丁寧に伝えることが可能だと思い、広報パートナーとして活動したいと考えた」と経緯を語る。
「良い商品をつくることももちろんですが、それを伝える人が、それが良いものだと共感し、理解し伝えていくことが何より大切。まずはより多くの方にWFPの活動を知っていただくために、きっかけ作りとして、手料理を作る中で一人ひとりが実践できることから、さまざまな取り組みを提案していきたい」(中谷さん)
「使い切り術」広げ、食品ロス削減を
飢餓問題が深刻化する一方で、世界では13億トンの食品が廃棄されている。日本でも、食品ロスは年間約600万トン(農林水産省平成30年度推計値)に上り、これは、WFPによる食料支援(2019年で年間約420万トン)の約1.4倍に相当するという。
こうした食の不均衡問題について考えてもらうきっかけを作ろうと、ABC Cooking Studioは食材を使い切る「食品ロス削減1dayレッスン」を開発し、9月から全国各地で実施する。
「キャベツ使い切りレッスン~キャベツの特徴を知って食品ロスを減らそう~」では、1食(2人分)でキャベツ半分を使い切る。キャベツの芯までおいしく仕上げ、使い切り術を伝えることで、食材ロス削減に貢献する。5品作って出る廃棄量は18グラムだけだという。
ABC Cooking Studioオンライン事業部の重文字優さんは、「食に携わる企業の責任として、飢餓問題や食品ロスの問題に貢献したいという思いがあった。海外の深刻な食糧問題を直接支援することは難しいが、こうした問題を広く知らせることで、間接的に支援することができる。一人でも多くの人に関心を持ってもらい、自分事に置き換えるきっかけづくりにつながれば」と語った。