国内最大級の産直アプリ「ポケットマルシェ」を展開するポケットマルシェ社(岩手県花巻市)は9月27日、生産者と寄付者が直接やり取り可能なふるさと納税サービスを始めた。既存のふるさと納税では生産者と寄付者の間に自治体が介在しており、返礼品の管理など自治体側の負担が課題だった。ポケットマルシェ社のふるさと納税では、返礼品の管理は生産者が行うため寄付者と直接やり取りができ、関係人口の創出につなげる。ふるさと納税のポータルサイトで生産者と寄付者が直接コミュニケーションを取れるものは珍しい。(オルタナS編集長=池田 真隆)
ポケットマルシェの高橋博之社長は同日に開いたオンライン会見で語句を強めた。
「ふるさと納税は本来の目的からずれてしまい『返礼品合戦』になっている。全国を訪問して、各地の生産者と話してきたが、寄付者の顔が見えないことや日々の売り上げにつながらないという声を聞いていた。これらの課題の解決を目指した」
ふるさと納税の勢いは伸びている。2014年の市場規模は388.5億円だったが、4年後の2018年には12倍以上の5127.1億円に及んだ。民間企業によるふるさと納税のポータルサイトも乱立し、「飽和状態」とも言える中で、同社は参入を決めた。
後発組として、既存のポータルサイトとの最大の違いは、「顔が見える関係性づくり」だ。生産者が返礼品の紹介や発送・在庫管理などを行うことで寄付者と直接やり取りできるようにした。特設サイトではその生産者が自らの生い立ちや仕事への想いなどを自由に執筆できるので、寄付者は生産者の人柄を軸に返礼品を選ぶことができる。そうすることで関係人口を創出して、地域活性化につなげる狙いだ。
寄付者には寄付額1000円ごとに300ポイントが自治体から付与される。寄付者はそのポイントで返礼品を購入する。状況次第だが、生産者が収穫したばかりの産品を送ることもあり、申し込みした翌日に届くこともあるという。
既存のふるさと納税では、生産者と寄付者の間に自治体が介在しており、返礼品の紹介、発送、在庫管理などはすべて自治体が行っていた。そのため、生産者と寄付者はお互いの顔や納期が分からず、生産者のファンを増やす施策になっていなかった。
9月27日時点では20自治体、約200人の生産者がポケットマルシェのふるさと納税に参画している。同社は2022年度中に100自治体の参画を目指す。
ポケットマルシェの仕組みでは、生産者は自らの商品の魅力や人柄を伝える作業が必要だ。一般的に直販は「手間と時間が掛かる割に売れない」と言われるが、同社は、直販を上手く流通させている生産者は、手間と時間を掛けて関係性を育んでるという。
その結果リピーターとなり、顧客が営業担当のように新規の販路開拓を手伝ってくれることも起きた。短期的には手間かもしれないが、長期的に見れば営業コストなどの削減にもなり、ファンを増やすことにつながっている。