【対談】イーロン・マスクの大義と計算

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高級電気自動車、蓄電ビジネス、宇宙開発――。話題に事欠かないイーロン・マスクは一体何を考えているのか。モータージャーナリストの清水和夫氏と島下泰久氏が話し合った。(構成=池田 真隆・オルタナS編集長)

対談した清水和夫さん(左)と島下泰久さん

清水和夫:
AJAJ会員/プロのレースドライ バーを経て、1988年から自動車ジャーナリストを活動開始. 神奈川工科大学特別客員教授 専門は自動車安全技術などシャシー技術の造詣が深い。現在内閣府SIP自動走行構成委員など政府委員を歴任。

島下泰久:
モータージャーナリスト。経済メディア、ファッション誌などに幅広く寄稿。 YouTubeチャンネル「RIDE NOW」も主宰する。

――テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏はEVだけでなく、人型ロボットの開発、さらには宇宙開発にも取り組んでいます。イーロンが目指していることは何だと思いますか。

島下:正直に言って、彼が宇宙に行くこととぼくらの生活がどうひもづくのかは分かりません。ですが、彼の活動は、もしかするとスティーブ・ジョブスをはるかにしのぐほどのスケールで社会にインパクトをもたらすのかも、とも思います。清水さんは、イーロンはすべての生活者にとっての革命を狙っているのか、もしくはテクノロジー革命なのか、どちらだと思いますか。

清水:現時点ではテクノロジー革命だと思います。でも、そのテクノロジーの先にどのような革命が待っているのかは分かりません。自動車業界でのイーロンの立ち位置は特別で、どのメーカーも一体彼は何者なのだろうかと見ています。

トヨタもテスラと2010年に業務・資本提携を結び、テスラに米国市場向けの「RAV4 EV」を作らせました。ですが、契約満了を待たずに2014年に、この契約は解消しました。

おそらく、イーロンの自由な思想が、伝統的なモノづくり企業であるトヨタの価値観と合わなかったからだと思います。ソフトバンクの孫さんなら投資し続けていたでしょう。イーロンは、決してお金儲けのためにEVを作っているわけではないと思います。

島下:商業主義ではないことは私もそう思います。世の中を変えたいと考えているのではないかと。気になるのは、彼はEVで何を変えたいのか。普通はCO2を減らすためと考えがちですが。

清水:アメリカでは、カリフォルニアが90年代から規制したように、CO2の排出量よりも排ガスが問題になっています。本当にやりかったのは、自動車革命ではないだろうか。つまり、新しい時代の自動車づくりに挑んでいると思います。

EVの利点について、みんなCO2を排出しないことと考えますが、メルセデスもアウディもEV開発に力を入れる狙いには自動車革命があります。いまは投資家へのアピールもあり、大義としてカーボンニュートラルを掲げていますが、本当にCO2を減らしたいなら、HVを選ぶはずです。

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #自然エネルギー

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