10月17日、英国のウィリアムス王子が推進する、環境問題への対策を促進するための環境賞「アースショット賞」の第1回受賞者が発表された。受賞は逃したものの日本から唯一ファイナリストに選出されたのは、水処理自立制御装置を製造・開発するスタートアップ企業、WOTA(ウォータ、東京・豊島)が開発した「WOTA BOX」だ。生活排水の98%以上を再生して循環利用することで、水道設備への接続なく、水を供給できる装置「可搬型水再生処理プラント」。すでに日本の災害現場で2万人以上が利用した経験を持つ。(寺町幸枝)

水道設備がなくても生活排水を再生して循環利用できる「WOTA BOX」©︎WOTA

5分野の活動やプロジェクトに賞金100万ポンドを授与

アースショット賞は「自然を保護し回復する」、「大切な大気を浄化する」、「海をよみがえらせる」、「ゴミの出ない世界を作る」、そして「気候変動を修復する」の5つの分野について、革新的なソリューションを提供する活動やプロジェクトにそれぞれ賞金100万ポンド(約1億5700万円)を授与し、世界への波及を狙う。活動は今後10年に渡り開催される予定だ。

WOTA BOXが開発した「WOTA BOX」は、「ゴミの出ない世界を作る」という分野で候補に選出された。同分野では回収と再配布で食品廃棄削減に取り組むイタリアのミラノ市(アースショット賞を受賞)や、ケニアで最大の廃棄物再利用工場を運営するSanergy(サナジー)とともに最終選考に残ったが、惜しくも受賞を逃した。

「WOTA BOX」は大きめのスーツケースサイズの装置で、通常なら2人分のシャワーに使われる100ℓの水が入っている。この水を一度使っても再生し循環利用させることで、約100人分のシャワーを可能にした。必要な電力も最小限のため、発電機をつないで稼動可能。さらに、インターフェースを簡略化し、家電のように操作できることも特徴の一つだ。

WOTA CORE の仕組み:搭載されているAIとセンサーが、循環利用される水の水質を管理・維持し続ける©︎WOTA

■小規模・分散型水道インフラを提供

WOTAの存在意義は「人と水のあらゆる制約をなくすこと」と話すのは、WOTAの広報チームマネージャー市川伸さんだ。「WOTAは製品単体で水処理ができる水処理自律制御システム(WOTA CORE)を提供している」と続ける。

WOTA BOXに導入されているこのシステムは、AIと独自センサーを搭載することで水質とシステムを常時監視し、制御している。一定の基準に該当する水質を保つために、メンテナンスはもちろん、異常が起きた場合には感知し、通知する仕組みを整えている。

この水処理自動制御システムを利用すれば、これまでの水処理=大規模インフラという前提を覆し、小規模・分散型のインフラが構築できるという。これまで熟練した技術者が五感を働かせて調整していた水処理に対し、WOTA COREによる水処理を自動制御できる仕組みを提供することで、赤字構造の日本の水道インフラ問題を解決する一助になるとも期待されている。

■水不足が争いの火種になる

ユニセフの最新の調査によれば現在、世界で総人口の3割に当たる22億人が、安全な水を手にできないでいるという。今後、気候変動の影響で水需給が逼迫している状態を示す「水ストレス」に悩まされるエリアは、さらに広がるとみられる。

一方、日本国内に目を向けると、「国内の水処理施設は、自治体や企業が処理施設を運用しているが、運用管理者の減少などの問題も発生している」と市川さんは話す。地方の自治体では、人口減少に伴う水道料金収入の減少が自治体の財政を圧迫しているところも出てきた。加えて、下水道管理の専門的な知識や経験を持った熟練人材不足も指摘されている。

人が生活するのに欠かせない水の問題は多くの人に影響を及ぼす。限られた資源を有効に利用するためには、これまで以上にこうした画期的な技術へのニーズが高まるだろう。WOTAは今後国内だけでなく、米国への進出を皮切りに、海外への展開も視野に入れているという。アースショット賞のファイナリストとして日本発の革新的な技術が、世界規模の環境対策に発展していくことに期待を寄せる。