■ニック木村の「今さら聞けないサステナビリティ」(1)
「SDGs」「ESG」「CSR」。サステナビリティを取り巻く状況は日々変化し、新たな用語も増えた。そもそもサステナビリティ領域は、どこから理解すれば良いのだろうか。カシオ計算機で約12年間サステナビリティの管理職を務めた「ニック木村」こと木村則昭・オルタナ総研フェローが「今さら聞けないサステナビリティ」の疑問にお答えする。
【Q1】 今さらですが、CSRって何をすることなのでしょうか。サステナビリティ、ESG、SDGsとは何がどう違うのでしょうか。
【A1】 CSRは、「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった言葉で日本語では「企業の社会的責任」という訳語が一般的ですが、英語のResponsibilityは、Response(対応する)+Ability(能力)ですから、「責任」というよりむしろ「応える力=対応力」と訳すのがよりふさわしいので、「企業の社会的対応力」と訳すべきでしょう。
CSRの定義
筆者の考えるCSRの定義は、「企業がステークホルダーをはじめとした社会からの期待や要請に、事業を通じて応えること」です。社会から期待され要請されることとは、企業の独自性を発揮して何らかの社会課題の解決に貢献することです。
そしてここで重要なのは「事業を通じて」というところです。つまり、片手間ではなく、本業で社会課題の解決に貢献すること、それがCSRの本来の意味です。
ESG、SDGs、サステナビリティとは何か、CSRと何がどう違うのか
結論を先に言ってしまうと、「みんなほぼ同じこと」と考えて差し支えありません。
ESGは Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとった言葉で、主に金融業界でCSRとほぼ同じ意味で使われています。投資家が企業を評価する際に、企業のESGへの取組みを判断基準として用いることが多くなってきています。
SDGs(エス・ディー・ジーズと読みます)は、もうかなり認知度が高くなってきていますが、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字を並べて最後に複数形のsをくっつけたものです。
2015年9月の国連サミットで加盟193カ国の賛同により採択されたもので、社会の様々な課題を17の具体的な目標(ゴール)に集約し、2016年から2030年の15年間で達成することを目標に掲げました。
サステナビリティ(Sustainability)は、特にアメリカではCSRという言葉があまり使われない代わりにサステナビリティがCSRと同じ意味で使われていますが、もともとは「持続可能性」という意味です。
そもそもこの言葉が取り沙汰されるようになったのは、近年、人類や社会の持続可能性に黄色信号が灯り始めたからです。CSRもESGもSDGsも、突き詰めればこのサステナビリティ(持続可能性)を維持するという目的のために行うこと、と言うことができます。
要するに、企業としてやることは一つ、つまり「ステークホルダーをはじめとした社会からの期待や要請に、事業を通じて応えること」なのですが、それをどの視点から見るかだけの違いです。
CSRは企業からの視点、ESGは投資家からの視点、SDGsは国際社会からの視点であり、それらは全てサステナビリティへの貢献が目的、と捉えれば分かり易いかと思います(図1参照)。