一時保護所から児童養護施設にうつる
児童養護施設で暮らしている子どもたちは基本的にまず、一時保護所に行きます。家から直接、児童養護施設に入所する子は、ほんの少数です。一時保護所は、児童相談所の職員が親御さんと話し合いをしたり、施設に入所するための調整をしたりする間の一時的な「子どもの避難所」みたいな感じだと思ってください。
親御さんが子どもを連れ戻しに来てしまうケースもあるので、住所は特定されないよう、非公開である場合が多く、児童相談所に併設しているところもあれば、別々のところもあります。
統計によると、一時保護所で暮らす期間は平均29.4日(出典:福祉行政報告例【平成30年度】)。原則として2ヶ月を越えてはならないとされています。私は1ヶ月半ぐらいで施設に入所できましたが、定員の空き具合や、児童福祉司(児童相談所の職員)と親とで話し合いが難航している場合などは、入所する施設がなかなか決まらず、長いケースだと数年も一時保護所にいたという子もいるようです。
また、ここから家庭に戻される子が半数以上いるのも現実です。児童養護施設に入所した当日の記憶はぼんやりとしか残っていません。
夜、リビングであたたかいオレンジ色のライトのもと、一緒の部屋で暮らす子どもたちが4人、ダイニングテーブルで勉強している姿だけ、なんとなく覚えています。その日は、担当の先生が私につきっきりで一緒にいてくれました。
「これがれいかちゃんの新しい洋服だよ」とか「ここは大丈夫な場所(安心できる所、ということ)なんだよ」と話しながら、私が眠りにつくまでずっと隣にいてくれた記憶がありますね。
いま考えると、きっと先生が優しくて少しは安心しただろうな、とか想像はできるんですけど、やっぱりどう思い返してみても、感情の記憶がないんですよね。私が入所していた児童養護施設・福音寮(ふくいんりょう)の飯田先生に当時の私のことを聞いてみたら、「あなた、結構大変だったよ」と言われました。
「れいかさんは児童相談所から施設に来たとき、車の中から3時間もまったく出てこないで、ずっと泣いていたんだよ」って。これもまた、私はまったく記憶にないんですけどね(笑)。
きっと、施設に来てみたらやっぱりちょっと怖かったり、状況を整理できない自分にあたふたしていたり……それで泣くしかなかったのかもしれません。入所してどのように慣れていったか、ということで言えば、同年代の子が遊びに入れてくれたり、一緒にテレビを見たり、そういう時間を経て徐々に少しづつ馴染んでいった感じです。
数日後からすぐに新しい小学校に転校したのですが、同じクラスの子が校長室に迎えにきてくれて、元気いっぱいに受け入れてくれたということもあって、学校生活に慣れるのはあっという間でしたね。
「午前0時過ぎ、7歳の私は姉と家を出た」(1/4)
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