日本初、渋谷にLGBTQフレンドリーな福祉事業所

LGBTQなどの性的マイノリティーにも対応した就労移行支援事業所が12月1日、東京・渋谷にオープンした。就労移行支援事業所は全国に約3500あるが、LGBTQフレンドリーな事業所はなかった。LGBTQ向けのノウハウを構築して全国の施設に広げていくことを目指す。(オルタナS編集長=池田 真隆)

ダイバーシティキャリアセンターを運営する認定NPO法人ReBitの藥師実芳(やくし・みか)代表、国家資格キャリアコンサルタントでもある

このほどできた施設は、「ダイバーシティキャリアセンター」。LGBTQのキャリア支援を行う認定NPO法人ReBit(リビット)が運営する。

LGBTQ向けの就労移行支援事業所であるが、LGBTQは障がいではない。この施設が支援するのは、「複合マイノリティー」といわれる人たちだ。精神障がいや発達障がいがあるLGBTQなどマイノリティ性が複数ある人たちを指す。発達障害とLGBTQでは対応方法が異なるので、これまで課題が可視化されづらかった。

就労移行支援事業所は、障がいがある人向けに就職や復職支援を行う福祉サービスである。社会復帰を支援するための「セーフティネット」の役割を果たしてきた。

セーフティネットは「誰もが安全・安心に利用できる」ということが前提の社会の仕組みだが、LGBTQに対しては十分に機能していなかった。

リビットの調査では、福祉サービスを利用した際に、支援者側に性的マイノリティーへの理解がないなどの理由から、「ハラスメントや困難を経験した」と回答したLGBTQは76%に及んだ。

就職支援だけでなく、就職してからも定着支援として相談対応を行う

経験したハラスメントは、セクシュアリティに関わらずスーツや服装の指定、通名が使えない、トイレなどの設備の課題などだ。さらに、ハラスメントを受ける背景には、こうした制度だけでなく、日常のコミュニケーションもある。

無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)ともいわれるもので、例えば、下記のシーンが該当する。

・(日常の場で)「彼女・彼氏いますか?」――男は女を、女は男を好きになるという前提で聞いているので偏見を与える。パートナーはいる?と聞くように。
・(レズビアンに向かって)「そんなに美人なのに、レズビアンでもったいない」――女は男と付き合って当たり前という偏見がある。
・(カミングアウトした人に対して)「ゲイでも偏見ないから大丈夫」――無意識のうちに偏見を持っており、それに注意していかないと意図せずに差別的な発言をしてしまう。そして、そのことに気付けない。

施設のオープン祝いに届けられたレインボーの花

電通が2021年に行った調査ではLGBTQは8.9%と人口の約1割に及び、言葉の認知度も80%を超え「一般化」はしている。しかし、配慮を欠いた制度や無意識の差別的発言によって、職場や学校で困難を感じているLGBTQの当事者は少なくない。

困難に直面した当事者をさらに苦しめるのが、「周囲に相談相手がいない」ということだ。LGBTQという言葉は一般化されたが、理解までしている人はわずかだ。当事者の中には親や友人にもカミングアウトできずに一人で悩みを抱え込む人もいる。

特定非営利活動法人虹色ダイバーシティなどの調査では、トランスジェンダーの3人に1人に当たる35%がうつを経験していたことが分かった。

つまり、LGBTQなどの性的マイノリティーは、社会の無理解によって、メンタルヘルスが悪化しやすく、かつ、福祉サービスを頼ろうとしても壁は大きいのだ。

この施設を運営するリビットの藥師実芳(やくし・みか)代表(32)は、こうした悩みに向き合い10年以上支援活動をしてきた。リビットは藥師代表が大学生時代に学生団体として立ち上げ、2013年にNPO法人化した。

これまでにLGBTQの若者を中心に3500人以上のキャリア支援を行い、LGBTQも働きやすい職場づくりに取り組む200社の相談に乗ってきた。

実は、藥師代表も「トランスジェンダーで発達障害(ADHD)」と明かす。かつて職場でADHD特有のミスや、トランスジェンダーであることによるハラスメントが重なり、メンタル不調になった際、「相談できる場がないと感じた」と語る。

「福祉サービスは誰もが安全・安心に利用できるものであってほしい」と藥師代表は強調する。「やっとのことでつながった福祉サービスでもハラスメントを受けて、そのことで生きること自体に絶望し、亡くなった仲間もいます」と述べる。

仲間が受けたハラスメントや自身の原経験も踏まえて、LGBTQの当事者も安全・安心に利用できる福祉サービスを目指す。同団体ではオンラインでキャリア支援を行ってきたが、常設の施設を構えるのは初のこととなる。

LGBTQ向けの対応ノウハウを蓄積して、「全国に3500ある就労移行支援事業所に提供したい。ダイバーシティと福祉の架け橋を目指す」と語る。

<ダイバーシティキャリアセンター 概要>
◎住所:東京都渋谷区代々木3-26-2 4F (初台駅徒歩7分、新宿駅徒歩11分)
◎時間:平日9:00~18:00 (訓練時間は10:00~15:00)
◎事業:就労移行(定員20名)
◎対象:精神・発達障害・後天性免疫不全症候群(HIV)など。障害以外もマイノリティ性がある「複合マイノリティ」の方も歓迎。
◎連絡先:03-4577-9735 / dcc@rebitlgbt.org
◎HP:https://diversitycareer.org/

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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