環境NGO5団体は12月8日、日本の電力大手JERAが豪バロッサガス田の権益12.5%を取得することを受け、同ガス採掘事業から即時撤退することを求める声明文を発表した。この事業は、豪ダーウィンにある液化基地でLNG(液化天然ガス)を生産するプロジェクトの一環だ。NGOはパリ協定の「1.5度目標」に整合しないことや、先住民族の権利侵害の観点から即時撤退を要請している。(オルタナ副編集長=吉田広子)

オーストラリアの北部にあるダーウィン液化基地では、東ティモール海域内に位置するバユ・ウンダンガス田から供給される天然ガスを原料にして、LNG(液化天然ガス)を生産している。だが、このバユ・ウンダンガス田は、数年以内に生産終了を迎えるため、その後継としてバロッサガス田の開発が進められてきた。

米コノコフィリップス社が主導して開発し、JERAは2003年からこのプロジェクトに参画している。JERAは東京電力フュエル&パワーと中部電力が出資する発電会社だ。

JERAの資料によると、バロッサガス田の天然ガスを原料にしたLNGの生産は、2025年ころ開始を見込んでいるという。同社は、今回の権益12.5%の取得で、年間約42.5万トンのLNGを引き取ることになる。

気候変動対策の後退と先住民の権利侵害を招く

これに対し、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、国際環境NGO FoE Japan、国際環境NGO 350.org Japan、メコン・ウォッチの環境NGO5団体は、JERAに対しバロッサガス田開発からの即時撤退を要請した。

その理由は2つある。一つは、パリ協定の1.5度目標に整合しないことだ。国際的なシンクタンクのエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)によると、バロッサガス田は、ほかのオーストラリアのガス田と比較して単位当たりの炭素排出量が最も多く、仮にCCS(二酸化炭素貯留)設備を設置したとしても、約3割の排出抑制しか達成できないという。

もう一つは、先住民族の「十分な情報が提供された上での自由な事前の合意(FPIC)」が得られていないことだ。

「先住民族の権利に関する国連宣言」などでは、影響を受ける先住民族のFPICを得ることが国際水準となっているが、今回のプロジェクトでは先住民族との協議がほとんど行われていないという。これは、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」や民間銀行が融資の際に遵守するべき国際環境人権規範である「エクエーター原則」に違反する。

バロッサガス田からのパイプラインは、ティウィ諸島の先住民族であるティウィ族が生活を営んできた地域からわずか6kmの距離に設置されるため、海洋環境、生計手段、文化など先住民族への影響が懸念されるという。

ティウィ族のアントニア・バーク氏は「ここでどんな事業を行うのか、だれも知らせてくれない。ティウィとの協議を全く行わずに事業を行うのは大きなリスクになる」と発言している。

JACSESの田辺有輝氏は、「本事業は、パリ協定だけではなく、JERAが掲げる『2050年実質ゼロ』にも整合していない。先住民族との適切な合意もなく、選択肢も与えていない。バロッサガス田の開発プロジェクトは、環境面でも人権の観点からも問題が多く、これ以上進めるべきではない。融資を検討している金融機関にも同様の責任がある」と訴えた。