環境NGO5団体とその代表者を含む個人株主は4月11日、金融、商社、電力3業界の4企業に株主提案を提出し、気候変動対策の強化を求めた。声明や要望書を出すにとどまらず「株主」として声を届けることで、より実効性のある対応を迫る。(オルタナ副編集長・長濱慎)
■世界中の投資家とともに、脱炭素への変化を強く迫る
株主提案を提出したのは、マーケット・フォース(豪)、国際環境NGO 350.org Japan、国際環境NGO FoE Japan、特定非営利活動法人気候ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の5団体。4社に対し、定款の一部変更として以下の対応を求めた。
●三井住友フィナンシャルグループ
・パリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画の策定開示
・IEA(国際エネルギー機関)によるネットゼロ排出シナリオとの一貫性のある貸付等
●三菱商事
・パリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画の策定開示
・新規の重要な資本的支出と2050年温室効果ガス排出実質ゼロ達成目標との整合性評価の開示
●東京電力ホールディングス・中部電力(※)
・2050年炭素排出実質ゼロへの移行における資産の耐性の評価報告の開示
※2社とも、火力発電会社JERAに出資していることから株主提案の対象となった。
株主提案をしたNGO5団体によると、上記4社が関与する10件のガス事業(1,780万kW)の運転期間中の温室効果ガス排出量は12億トン。日本が2030年までに削減目標としている量のほぼ2倍に相当するという。
個人株主としては、三井住友フィナンシャルグループへの提案に350.org Japan代表の横山隆美氏、同シニア・キャンペーナーの渡辺瑛莉氏、RAN日本代表の川上豊幸氏。三菱商事への提案にはFoE Japan 気候変動・エネルギー担当の深草亜悠美氏が参加した。
横山隆美氏は「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新の気候科学は、これ以上化石燃料への依存を続ければパリ協定1.5℃目標の達成が不可能になることを示しています。ところが日本の金融機関は、そのような科学的知見がなかったかのように化石燃料への支援を続けています」と指摘し、株主提案の意義をこう語る。
「我々NGOはこれまでも銀行をはじめとする企業担当者と対話を続けてきましたが、十分な方針強化は実現していません。NGOや市民による株主提案は銀行に直接私たちの意見を伝えると同時に、銀行に影響力を持つ投資家にもアプローチできる数少ない機会です」
「提案することで、気候変動に懸念を持つ世界中の投資家とともに、脱炭素への変化を強く迫ることができるのです」という横山氏らの声に、企業はどう応えるのか。
企業がCSRを推進する上で大切なプロセスに「ステークホルダーエンゲージメント」がある。日本経済団体連合会(経団連)の「企業行動憲章 実行の手引き(第7版)」は、以下のように定義している。
企業が社会的責任を果たしていく過程において、相互に受け入れ可能な成 果を達成するために、対話などを通じてステークホルダーと積極的にかかわりあうプロセスを指す。
NGOは企業にとって重要なステークホルダーであり、さらに株主となれば、その声に耳を傾けないわけには行いかないだろう。