株主のプレッシャーがMUFGの気候対策を動かす■

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が6月29日に開いた第16期定期株主総会で、環境NGO気候ネットワークと国際環境NGO所属の個人株主3人が提出した株主提案は否決されたが23%の賛同を得た。NGOによる株主提案では、MUFGに対して、融資方針をパリ協定に整合したものに見直すことを求めていた。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

MUFGの株主総会の会場前で株主たちに環境に配慮した投融資方針を求めるNGO

 株主提案とは、企業の株主総会で株主が取締役選任、定款変更、配当水準などを提案することだ。今回の共同提案者は、特定非営利活動法人 気候ネットワーク」(日本)と、「マーケット・フォース」(オーストラリア)、「レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)(米国)、「国際環境NGO 350.org Japan」(日本)に所属する個人株主3人だ。

同者らは、「日本の会社法では、株主が提案権を有するのは議決権を行使できる事項に限られる。議決権を行使できるのは、会社法または対象企業の定款に定められた株主総会決議事項に限定されている。定款を変更しないと要求を実現できない」と株主提案の理由を述べている。

MUFGは、2019年に石炭火力発電の新たな事業への融資は原則実施しない方針を決め、石炭火力発電所開発へのプロジェクトファイナンス(事業融資)の残高を、2040年度にゼロとする目標を打ち出した。

4月26日発表の「石炭火力発電セクター」「森林」「パーム油セクター」に関するファイナンス方針では、石炭火力発電所の新設に加え、既存発電設備の拡張にも原則としてファイナンスを実行しないと規定した。

気候ネットワークによると株主提案の主な論点は、次の通りだ。

「三菱UFJフィナンシャル・グループは、化石燃料への資金提供額が世界6位の銀行であり、現行のファイナンスポリシーは、パリ協定の目標に整合していない。石炭・石油・ガス関連事業の拡大および森林破壊への継続的な資金提供ができるものとなっている。IEA(国際エネルギー機関)が最近発表した『2050年ネットゼロ』報告書には、新規の化石燃料開発へのファイナンスは、2050年までに全世界の温室効果ガス排出量をゼロにする『ネットゼロへの道筋(ロードマップ)』に反すると示されている」

「MUFGは今年5月、ネットゼロを目指すことを表明したが、ネットゼロへの道筋を保証する中間目標あるいは明確な指標を掲げるに至っていない」

「本株主提案は、MUFGが、明確な指標と短期及び中期の目標を含めた明確な計画を開示し、気候関連財務リスクを効果的に管理し脱炭素化を実現することを実証することにつなげるものである」

この株主提案に対して、MUFGは第16期定時株主総会招集通知の中で、「取締役会の意見」として「本議案に反対する」としていた。

「MUFG環境方針において、積極的な情報開示等を明文化しており、従来より気候変動対応を経営の最重要課題の一つと位置づけ、お客さまの脱炭素化への移行サポートや当社グループのリスク管理強化等を進めてきた。更に、MUFGカーボンニュートラル宣言に則り、今後、パリ協定目標に沿った投融資を行うための指標と目標、経営戦略を具体化し、実行していく」

「定款は会社を運営する上での基本的な方針を定めるものであり、個別具体的な業務執行に関する事項を規定することは適切ではない」と同通知で示した。

気候ネットワークの平田仁子・国際ディレクターは、「大手議決権行使助言会社が会社提案を支持したにもかかわらず、4分の1に迫る23%の株主が私たちの提案を支持したことは大変心強い結果だ」と述べ、「投資家が、今のMUFGの方針ではまだ不十分であることを突きつける結果になったと考えている。今日の議決権行使は、経営者をさらに追及するものであり、MUFGに対するプレッシャーは今後一層高まると考えている」とまとめた。

環境への貢献を重視するESG投資が拡大し一般化する中で、地球温暖化対策につながる投融資の実行を求める動きを金融機関に求める動きはイギリス、アメリカ、日本など世界規模で強まっている。