三井住友フィナンシャルグループはこのほど、化石燃料プロジェクトからの撤退を求める個人株主の提案を退けるとともに、新たな気候変動対策の方針を発表した。株主提案を行ったメンバーが所属する国際環境NGO350.org Japanは「新方針はパリ協定の1.5℃目標に整合しておらず、引き続き株主提案を行う」と、対話を続けていく意向だ。(オルタナ副編集長・長濱慎)

三井住友フィナンシャルグループHP

■「すでに取り組みを進めている」を理由に株主提案に反対

株主提案は350.org Japanのメンバーと市民からなる8名の個人株主が、4月11日に行ったもの(オルタナ4月22日記事)。以下の2点について、定款の一部変更を求めた。

・パリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画の策定開示
・IEA(国際エネルギー機関)によるネットゼロ排出シナリオとの一貫性のある貸付等

これに対し、三井住友FGは5月13日に「反対」を決議した。「すでに取り組みを進めている」、「個別具体的な事項を定款に規定するのは適切でない」などを、その理由としている。

三井住友FGは同日、新たな方針として「気候変動に対する取組の強化」を発表。石炭火力発電に対するフェーズアウト戦略の拡充など、9つの取り組みを進めるとした。350.org Japanは一定の前進を評価しつつも、以下の4点などからパリ協定の1.5℃目標達成には不十分だと指摘する。

1)新たに「設備紐付きのコーポレートファイナンス(22年3月時点・約800億円)の残高を2040年までにゼロ」という目標を掲げた。しかしパリ協定目標達成には、OECD(経済協力開発機構)諸国で2030年、世界全体で40年までに石炭火力をゼロにする必要があり、より前倒しした目標設定が必要である。

2)座礁資産リスクや人権問題、生物多様性に配慮すべく、新規・既存の炭鉱採掘を禁じたことは他メガバンクに先駆けた取り組みとして評価できる。しかし、コーポレートファイナンス(使用目的を限定しない融資など)に関する明確な規定がないため、なおも採掘事業に資金が流れる懸念が残っている。

3)電力セクターにおける2030年の温室効果ガス削減について「トランジションの過程では、絶対量に加えて炭素強度の目標を設定」としているが、絶対量の削減目標を設定していない。仮に化石燃料による発電を増やしても、それ以上に再エネ発電を拡大させれば「炭素強度の改善」は可能で、温室効果ガスの絶対量自体は増えかねない。

4)はじめて、エネルギーセクター(石油、ガス、石炭)における温室効果ガス排出量(8760万トン:絶対量)を公表した。しかし、パリ協定と整合性を取りつつ、どう削減していくかの中期目標を設定していない。さらに、目標設定は上流に限定され、下流にあたるパイプライン、液化天然ガスターミナル、火力発電所が除外される恐れがある。

今回株主提案を行った1人である、350.org Japanの渡辺瑛莉シニア・キャンペーナーは、こうコメントした。

「株主提案の継続を通じて、三井住友FGが気候変動のリスク軽減においてリーダーシップを発揮し、競合他社とも引けを取らない目標と対策の強化を行い、企業価値の維持・向上を図れるよう引き続き働きかけを行います」