年の瀬が迫るなか、サステナビリティについて改めて学べる編集部おすすめ書籍11選を紹介します。年末年始の休みにいかがでしょうか。(敬称略、オルタナ副編集長=吉田広子)

1.『水俣 天地への祈り』(河出書房新社)
著者:田口ランディ

「水俣」はなぜ世界をひきつけたのか。他者の悲惨な体験に私たちはどう向き合えるのか。水俣病を見つめ続けた作家・田口ランディさんによるノンフィクション。水俣病公式確認から65年、近代化と日本的体質の悪しき象徴としての水俣病を改めてとらえ直し、未来への視座を高める一冊。

虚構の森

2.『虚構の森』(新泉社)
著者:田中淳夫(森林ジャーナリスト)

「『SDGsの落とし穴』にはまるな!」。こう訴えるのは森林ジャーナリストの田中淳夫さん。SDGsが急速に広まるなか、本書では、森林減少やCO2吸収、水源涵養など森や地球環境を巡る常識に対して、異論を申し立て、都合の良い思い込みを取り払うように投げかける。各章のタイトルも「虚構のカーボンニュートラル」「間違いだらけの森と水と土」「日本の森を巡る幻想」「フェイクに化ける里山の自然」「花粉症の不都合な真実」「SDGsの裏に潜む危うさ」と刺激的だ。気候変動や生物多様性、森林保全など、環境問題を新たな視点で見直すことができる。


フォトジャーナリストが撮った世界
フォトジャーナリストが撮った世界

3.『フォトジャーナリストが撮った世界の現実――無関心のすぐそばにある人生』(新評論)
著者:川畑嘉文(フォトジャーナリスト)

「この世界は限りない不平等で満ちあふれており、罪のない多くの人々が不利益を被りながら生きている。私は、これら日本のマスコミが伝えることのない、光の当たることのない人々の声を拾い上げ、本書を通じて伝えることにした」。フォトジャーナリストの川畑嘉文さんが、本書に込めた思いだ。川畑さんは、世界の難民キャンプや少数民族らが置かれた実態を取材しながら、NGO/NPOとともに自らも支援活動に加わってきた。「光の当たることのない人々」の側に立つフォトジャーナリストとしての生き方や、紛争地域や被災地のリアルを突き付ける一冊。

プラスチックごみ問題入門
プラスチックごみ問題入門

4.『プラスチックごみ問題入門――安心して暮らせる未来のために』(緑風出版)
著者:栗岡理子

環境経済学の専門家で環境ジャーナリストの筆者による「私たち一人ひとりが自らの暮らし方を変える」指南書であり、「脱プラをめざす声を政治家や行政、産業界に届けようとする」提言書である。詳しくは⇒ https://www.alterna.co.jp/44006/

夫婦別姓

5.『夫婦別姓――家族と多様性の各国事情』(ちくま新書)
著者:栗田路子(ベルギー)、冨久岡ナヲ(英国)、プラド夏樹(フランス)、田口理穂(ドイツ)、片瀬ケイ(米国)、斎藤淳子 (中国)、伊東順子(韓国)

日本では1980年代後半から夫婦別姓の議論が活発化したが、法審議は進まないまま30年あまりが過ぎた。本書では、英国、フランス、ドイツ、ベルギー、米国、中国、韓国に在住歴の長いライターたちが、自分の経験を通して、各国の家族や姓名のあり方を紹介する。詳しくは⇒ https://www.alterna.co.jp/44004/

コンプライアンスリスクに対するリテラシーの高い組織をつくる
コンプライアンスリスクに対するリテラシーの高い組織をつくる

6.『コンプライアンスリスクに対するリテラシーの高い組織をつくる』(第一法規)
著者:大久保和孝

本書は、公認会計士で大手監査法人に勤務経験のある著者の「激動の時代を生き抜くための唯一の不祥事予防法」だ。コンプライアンスの語源は、「柔軟性」「調和」「満たす・充足する」である。それゆえ、「法令遵守」ではなく「社会からの要請に応じながら、組織目的を実現」することを意味する。詳しくは⇒ https://www.alterna.co.jp/38078/

SDGsとパーパスで読み解く責任経営の系譜
SDGsとパーパスで読み解く責任経営の系譜

7.『SDGsとパーパスで読み解く責任経営の系譜』(文眞堂)
著者:長谷川直哉(法政大学人間環境学部兼大学院公共政策研究科教)

日本でも、企業が「パーパス」(存在意義)を定める動きが広がってきた。ESGの視点でも、消費者のから共感や信頼を得るためにも不可欠だ。本書では、「サステナビリティ」と「ダイバーシティ」をキーワードに、パーパスを追求し「幸せ」の量産を目指した日本企業の歴史を紐解く。
※オルタナ67号(2021年12月24日発売)にも寄稿して頂きました

気候変動と政治
気候変動と政治

8.『気候変動と政治――気候政策統合の到達点と課題』(成文堂)
著者:平田仁子(NPO法人気候ネットワーク国際ディレクター・理事)
2021年に環境問題のノーベル賞と言われる「ゴールドマン環境賞」を受賞した平田仁子さんが執筆。本書では、環境政策統合(EPI)、気候政策統合(CPI)の理論的研究を基礎に、気候変動分野の事例から政治の課題を解明。気候変動を巡る政治課題を明らかにし、「気候政治」と呼ぶべき政治のあり方を導き出すことを試みている。日本の気候政策の歴史から、気候変動を巡る国際動向まで網羅できる一冊だ。

ウェルフェア トリップ
ウェルフェア トリップ

9.『ウェルフェア トリップ――福祉の場をめぐる小さな旅』(アノニマ・スタジオ)
著者:羽塚順子

障がい者や社会的弱者たちが働き、暮らしている、全国各地の福祉施設や共同体を紹介する一冊。特別支援学級での障がい児指導の経験を持つ筆者は、フリーライターとして10数年にわたり約300の福祉施設を取材してきた。本書では、施設での暮らし方、働く様子、一人ひとりのエピソードが丁寧に描かれ、肩ひじ張らない、本来の「インクルーシブ(包摂)」とは何かを感じられる。

2030年の品質保証
2030年の品質保証

10.『2030年の品質保証――モノづくりからコトづくりへ』(日科技連)
中部品質管理協会(監修)、細見純子(編)、IoT時代の品質保証研究会(著)

自動車産業にかかわる執筆者らが、100年に一度の大改革といわれる自動車業界の環境変化を調べ、品質保証の新たな課題を明らかにした。GAFAのような巨大IT企業が参戦する環境で、今までの延長では必ず淘汰されるという危機感をもつ有志によって執筆されたという。MaaS(マース)を例に、そこに求められる品質要素や品質保証の課題などを考察する。AIやICTなどの技術の進化に伴う人材育成や「人間性尊重」の品質経営についても解説している。

11.『Animal SDGs』(ヌールエ デザイン総合研究所)
著者:イアン、益田文和

「動物は獲物をひとりじめにしたり、貯め込んだりしないのに、なぜ人間だけがするのだろう」「人間同士傷付け合う、いじめやけんか、暴行、紛争、自殺はどうして起きてしまうんだろう」――。動物の視点からSDGsを解説する本書。3分の1は自分のために、3分の1は自然(動物)のために、3分の1は未来のために――というメッセージから始まる。