「循環型経済」への移行で経済はよくなるのか

「循環型経済(サーキュラーエコノミー)に移行するとGDPも経済成長率も増える」――。循環型経済に関する論文でよく見かけるこの主張に疑問を呈するのは、サーキュラーエコノミー研究の第一人者である細田衛士・中部大学経営情報学部長だ。「需要を膨らますという視点が欠けている」と指摘し、「需要を創出する入り口はとても狭いが、欧州勢はその入り口を探すための努力をしている」と指摘する。(第14回オルタナハウスレポート)。(オルタナS編集長=池田 真隆)

サーキュラーエコノミー研究の第一人者である細田教授

――よく循環型経済に移行すると経済と環境のデカップリングにつながると言う研究者がいます。そのような循環型経済を実現するためには何が必要でしょうか。

循環型経済への移行で経済と環境をウィンウィンな関係にするためには「有効需要の創出」が必要です。そもそも経済は需要と供給から成り立つものです。「循環型経済で経済が良くなる」と主張する人はほとんど需要の側面を無視しているか、需要に関してムシの良い仮定を置いているかのどちらかでしょう。単に環境性能のよい商品を出しても需要は膨らみません。

ミクロ経済学的にいうと、支払い意思に裏付けられた需要がないと供給は実現しないし、マクロ経済学的にいうと有効需要が創出されない限り経済は活性化されないのです。

昨今の消費者の財布の紐は固いので、支払い意思が自動的に生まれることなどありません。有効需要にしても同じです。有効需要が簡単に創出されるなら財政政策も金融政策も不要なのです。循環型経済政策で経済を活性化させようとするならば人々の支払い意思を市場で実現させ、有効需要を創出しなければいけません。

よくエレン・マッカーサー財団(英国)などが「循環型経済への移行で新たな産業が生まれるから経済と環境が両立する」と言いますが、そんな簡単な話ではないのです。

確かに、マイバッグへの移行やワンウエイ容器からリターナブル容器への移行などが進んでいますが、もちろん勇気づけられる現象ではありますが、これは需要の代替が起きただけです。マクロ的に有効需要が増える保証などどこにもないのです。

――では、有効需要を創出するためには何から取り組めばよいでしょうか。

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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